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一応現代設定です。 激しい虐待描写はありません。 『ゆっくりだまし』 突然だが、僕には昔からとある悪癖がある。それは「猫だまし」。 相手の顔の前で両手をパーンと叩き合わせて怯ませるのが主旨のあれだ。 僕は人と話したりしていると、ついついその相手に猫だましをやってしまうのだ。 別に驚く顔が見たいとかそういう訳でもなく、ふと理由も無しに誰彼構わず標的にしてしまう。 勿論、見知らぬ人とか目上の人にはやらない。小さい頃は学校の先生にやって怒られたけど。 でも知り合って間もない友人なんかにはやってしまうので、みんな嫌がって僕から離れていく。当然だが。 そんなこんなで、友達は少ないし家族も冷たい。猫だまし一つで社会不適合者まっしぐらだ。 こんな癖は直さないといけないと常々思ってはいるが、人の顔を見るとどうもムズムズして仕方がない。 一度にまとめてやってしまえば、その後しばらくは我慢出来るのだが。 「つまりさ、せめて思うさま猫だましさせてくれる人が傍にいればなぁ」 「ゆっくりにでもやってろ!」 数少ない友人が僕に良いアドバイスをくれた。 多分嫌味で言ったんだろうけど、僕にとって優れた助言であることは確かだ。 ゆっくりなら人の顔に……まあ見えなくもない。若干デフォルメされてはいるが……。 ということで僕はゆっくりショップに赴き、一匹の安物ゆっくりれいむを購入したのだった。代金500円也。 購入時、れいむは箱に詰められながら「これでゆっくりできるよ!!」と大喜びだった。どんな暮らしをしてたんだろう。 「ゆっくりしていってね!!」 アパートの部屋に帰って箱から出してやるなり、舌足らずにそう叫ぶれいむ。 サイズはソフトボールより一回り大きい程度か。道に転がっていたら踏みつけてしまいそうだ。 近くで向き合ってみると相当不気味だが、慣れるとカワイイらしい。 「していってね、ってなあ。それは自分の家に来たお客さんに言うことだろ」 「ゆ・・・?ここはれいむのおうちだよ!!」 「違うよ、ここは僕の家……いや、これからはお前の家でもあるのか」 「そうだよ!ゆっくりしていってね!!」 「はいはい、れいむもゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!・・・ゆゆ゛! ごごはれいむのおうぢなの!!なんでおにいざんがゆっぐりじでいっでねっていうの゛!!」 想像以上にめんどくせー奴だな……。 まあ良いや。店員さんによると「結構、適当に飼ってても大丈夫ッスよ」とのこと。 でもペットショップの店員さんって、他のデリケートな小動物なんかの飼育にも詳しいんだよな。 そんな人が言う「適当」の基準がいまいち解らない。 まあゆっくりだったら死にそうになったら自分から言うだろう。適当に扱わせてもらおう。 「れいむおなかすいてきたよ!」 「じゃあ何か持ってこようか」 「ゆっ!ゆっくりごはんもってきてね!!」 自分の家だと言っておきながら、何だこの「精々もてなしてもらおう」って態度は…… ん? 「おなかすいてきたよ」は独り言か。そういえば僕も「腹減った~」って言うもんな。 しまった、じゃあ無視すべきだったんだ。僕を独り言に応じて動く奴隷だと認識してしまうぞ。 とは言え、今は期待の視線を送るれいむを放っておくわけにもいくまい。 パン!! 「ゆ゛ゆ゛!!??」 あ、つい猫だまししちゃった。人の顔っぽいものを見てるとねー。銅像とかにもやっちゃうし。 れいむは驚きに目を見開いて固まっている。その顔は意外とカワイイ。これなら愛せるかもしれない。 「おにいさんなにするの!!びっくりさせないでね!!ぷんぷん!!」 今度は頬を膨らませて怒っている。これはあんまりかわいくないな。 僕は生ゴミ入れから綺麗に剥いたリンゴの皮を二枚拾い上げると、お皿に盛ってれいむの前に出した。 ついでに量とバランスを考えて、トマトのヘタとかジャガイモの芽も出してあげたよ。 ジャガイモの芽は毒があるので大丈夫かなと思ったが、その辺は適当にしといた。 「ゆゆっ!ごちそうだね!ゆっくりたべるよ!」 この生ゴミがご馳走か……ペットショップでは何食わされてたんだろう? きっと好き嫌いしないゆっくりに育てる為のお店側の配慮に満ちた滋養食だったんだろうな。 れいむはお皿に顔を突っ込む。つまり全身を突っ込む。犬食いってレベルじゃねーぞ! 渦状のリンゴの皮をツルツルと蕎麦を啜るように口に入れていき、他のゴミも口に含むと、 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 と歌いながら食べ終え、目を潤ませつつ満面の笑みを浮かべた。実に簡単な食事だ。 リンゴの皮はもう一枚ある。それをツルツルと口に収めると、「むーしゃ、むーしゃ」と言い出す。 バーン!! 「しあゆ゛ぐっ!!!!」 歌の途中でびっくりさせられ、息が詰まったようになるれいむ。相当フラストレーション溜まったろうな。 相当気に障ったのか、ぷるぷると震えて目に涙を浮かべている。 うーん、良いリアクションするなあ。人間相手にはそこまで反応に期待してなかったけど、これはやる気出るわ。 ところでジャガイモの毒は大丈夫だったみたいだ。生野菜を食べるゆっくりもいるというし、効かない毒もあるのかも知れない。 さて、ごはんを食べたら次は何だろうか。まだまだ元気そうだし、遊びの時間かな。 遊びと言っても、一体何をして遊ぶのだろうか。どうすると楽しいのだろうか。つーかこいつらに人生の楽しみなんかあるのか? 疑問は尽きないが、とりあえず何かを与えてみよう。 人間の子供は、人の形をした人形で遊ぶ。そんな単純な思いつきから、ゆっくりのように丸いスーパーボールを与えてみた。 目の前にコロコロと転がしてみる。 「ゆ?ゆっくりまってね!」 れいむはぴょんぴょん跳ねて追いかける。顔がぐにゃりとしなる様子はなかなか怖い。 ま、何事も慣れだよ。慣れ。 やがて勢いを失ったボールに追いついたれいむは、ボールを口に含んだ。 「むーしゃ、むー・・・な゛にごれ゛!!」 まだごはんの時間だと思ってたらしい。 新しい食べ物と勘違いしたようだ。ちゃんと言うべきだったな。 「ごはんの時間はもうおしまいだよ。それはれいむのために持ってきたおもちゃだよ」 「ぷんぷん!もっとはやくいってね!!」 シパーン!! 「ぷひゅっ!?」 怒った顔に少しムカついたので、猫だまししてみた。驚きで唇が緩み、頬に溜められていた空気がプシュっと抜ける。 そのマヌケな顔に、僕もぷっと吹き出してしまった。 そのまま手を合わせてゴメンネと言い、猫だましがさも謝る為の動作だったみたいな感じにしとく。 「じゃあ、しばらくそれで遊んでいてね」 もう一度怒る隙を与えず、僕はその場から離れる。れいむは目を白黒させていた。 何かスーパーボールが喉に詰まったみたいになっていたが、ゆっくりに喉なんか無いしその内吐き出すだろう。 「ゆっゆっ!たまさん、ゆっくりしてね!ころころー♪」 本を片手に、隣の部屋かられいむを見守る。言いつけ通りにスーパーボールで遊んでいる。 口から慌てて吐き出したボールが壁にポーンと跳ね返るのを見て、遊び方を思いついたみたいだ。 上に覆いかぶさってコロコロと転がしたり、体のしなりを利用してボールを弾き飛ばし、壁に跳ね返させたり。 なかなか楽しそうに笑っている。ゆっくりの生活ってイメージ湧かなかったけど、皆こんな感じなのかなあ。 壁に跳ね返ったボールが僕のいる部屋に転がってくる。それを追いかけて来たれいむが、ふとこちらを見上げた。 僕が読書しながらつまんでいた麦チョコに気付いたらしい。目ざとい奴め。 「ゆっ!おかし!!おにいさん、れいむにもゆっくりちょうだいね!!」 「しょうがないなあ」 お菓子が美味しいという知識はどこから仕入れたのだろうか。 まあこいつら自身がお菓子なんだから、同じお菓子には多少詳しくても不思議は無い……よね。 小皿に麦チョコを盛り分け、れいむの方に持っていってやる。 「ゆっゆっ♪はやくちょうだいね!!」 「ゆっくりなのか早くなのかどっちだよ……やれやれ」 そしてれいむの目の前に皿を降ろす。 と同時にシュパーン!! 「ゆひっ!!」 猫だましである。お菓子によだれを垂らしていた顔が、急激に緊張に引き攣る。面白っ! れいむは怒っているのか、申し訳程度に目が吊りあがっている。頬を膨らませるのも忘れて口汚く怒鳴り始めた。 「なにずるの!!びっぐりざぜないでっていっでるでしょ!!ばかなの!?じぬの!?」 「あれ? お菓子いらないの?」 「ゆ!?ゆっくりたべるよ!!」 目の前に置かれた麦チョコの山に気付くれいむ。 お菓子に釘付けで、もう僕の事なんか眼中に無いみたいだ。一口頬張り、「しあわしぇー!」と叫ぶ。 もう怒っていたことは忘れたらしい。さすがに適当な性格をしている。 夜になり、晩御飯の時間が訪れる。 小さい身体にお菓子を詰め込んだので、れいむはもうお腹いっぱいだろうと思ったが別にそんなことなかった。 あれからずっと遊んでいたから、全部エネルギーとして消費しきったのかも知れない。 れいむをテーブルの上に乗せてやり、米やおかずを平たい皿に盛る。ご飯は向き合って食べないとね。 れいむは「ごはん」と聞いた時から嬉しそうに跳ね回っており、今もご馳走を目の前にウズウズと体を揺すっている。 「それじゃ、いただきまーす」 「ゆっ?いただきまーすってなあに?」 「ご飯を食べる時には挨拶するんだよ。ご飯を作った人と、材料になった生き物に対してね」 「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!ごはんさん、れいむにゆっくりたべられてね!!」 「アホウが。命令ばっかりしてないで少しは恭しくしなさい」 「ゆ゛ぎゅうううううぅぅぅ」 しゃもじでれいむの頭を押さえつける。あ、ちょっと口から餡子漏れて来た。きったね。カエルの胃袋みたい。 再三に渡って言い聞かせた末、れいむは「いただきます」をちゃんと言うことが出来た。 躾はこうやってやればいいんだね。少しゆっくりの扱い方が解って来た気がする。 ちなみに会食中は猫だましはしない事にしている。何故って? 自分がやられた時の事を想像してごらんなさい。 今日はオムライスを作ってみた。れいむの分は僕のものの半分程度のボリュームで、大皿の中央にこじんまりと盛ってある。 昼の食事で、どうもゆっくりには食べ物を散らかす癖があるらしいことが解った。それを考慮しての対策である。 れいむは皿に飛び乗り、ぷるんと震える半熟焼き玉子の一部分を啜るように食べた。 「むーしゃ、むーしゃ・・・・し、ししししししあわしぇ~~~~!!!」 「お、おお……そんなに美味しいか?」 「しゅっごくおいちいよ!!すごくゆっくりしたごはんだよぉ~~~~!!!」 滂沱の感涙である。れいむが乗り上げたお皿の上に水溜りが出来ていく。ゆっくりの体液だから砂糖水か何かだろうか。 若干オーバーリアクションの気があるが、自分の作った料理でこれ程喜んで貰えるのは一人暮らし冥利に尽きるじゃないか。 生ゴミで喜ぶゆっくりの味覚がナンボのもんかは知らんけど、今は素直に図に乗っておこう。 「はふっはふ、むーしゃ、むーしゃ!!ししし、しあわむーしゃ!!」 「おいおい、ゆっくり食べなよ」 「む、むーしゃゆっぐり、じじしあわむーしゃ~~~~!!」 「つーかもう黙って食え!!」 「むちゃ、しあわ、ゆっ!?もうなくなっちゃったよ!!」 慌てて食った余り、皿に盛られていた分はすぐに無くなってしまった。 量の見積もりが甘かったか……とか思っていたら、当然のように僕の方のお皿に飛び込んで来た。 スプーンで咄嗟に叩き落す。 「ゆべっ!!ちょ、ちょうだいね!!ごはんゆっくりちょうだいね!!」 「やめなさい。人の分を取るのは」 「ゆっ、ゆぐ、ゆぐりごはんちょうだいね!!かわいいれいぶにだべざぜでね!!」 もう目がヤバイよこいつ……スプーンの腹でぐいぐいと押し返すが、ゆっくりらしからぬ力で抵抗して来る。 力を込めれば押し返せなくもないが、加減を間違えるとスプーンでれいむの身体を押し抜いてしまいそうだ。 それは危ないので、適当なところでスプーンを離して解放してやる。 バチューン!! 「ゆびっ!!!?」 そしてほとんど間を置かずに猫だましをお見舞いしてやった。食事のマナーを破った者にはやっても良い自分ルールなのだ。 全力でこちらに飛びかかろうとしていたれいむの足(?)の力は驚きに仰け反り、 れいむのお皿ごとテーブルから下に落下する。ちなみにれいむのお皿はプラスチックなんで落ちても割れない。 「ゆ゛ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!」 何かすごい悲鳴したな。それほど大きな音はしなかったんだけど。 テーブルの下を覗き込んでみると、れいむに覆いかぶさったらしい大皿がぐらぐらと揺れていた。 その下から涙目のれいむが這い出てくる。皿に溜まっていた自分の涙と、残留ケチャップを頭から被っている。 「ゆぐっ、ゆっぐ・・・れいむの・・・れいむのおりぼんがぁぁぁ・・・」 自分の頭は見えないはずだが、リボンが汚れてるのは何となく解るのだろうか。 髪飾りはゆっくりにとって大事らしいので、そういうことに敏感な奴がいてもおかしくはないのだろう。 僕はそんなれいむを一先ず無視して、ゆっくりとオムライスを食べ終えた。なかなか上出来だった。 さて、夕食を終えたら風呂に入る時間だ。汚れていたれいむも洗ってやるか。 「おーいれいむー、こっちおいでー。お風呂入るよー」 「ゆっ?おふろ?きれいきれいするよ!!」 リボンを汚してからしばらくゆっくり出来ていなかったれいむだが、お風呂と聞くとパッと笑顔になった。 ゆっくりの語彙力やら知識やらってどこから来てるのか良く解らないな。何が通じて何が通じないのか、見極めていかねば。 ともかくお風呂という概念は知っているようで、喜び勇んでこちらにピョコピョコ跳ねて来る。僕の目の前まで来たところで、 ヒュッ 「ゆっ」 寸止め猫だましである。れいむはびくりと体を強張らせ、来るべき衝撃に備えていたようだ。 そうして動きを止めたれいむをひょいと手に載せ、僕は風呂場へと向かった。 いきなり驚かせようとしたかと思えば優しくしてくる僕に、態度を決めかねたれいむは居心地悪そうに「ゆっ、ゆっ」と言っていた。 自分で言うのも何だけど、僕は猫だましに関しては完全に支離滅裂だからね。気が狂っとる。 服を脱ぎ、浴室へと入る。浴槽の蓋を開けると、室内は湯気に覆われた。 まずはれいむから洗ってやるか。 「ゆっくりあらってね!!きれいきれいしてね!!」 「はいはい、じゃあまずリボンを取ろうね」 「ゆ゛っ!!や、やべでね!!でいむのおりぼんどらないで!!」 リボンをつまんで解こうとしたら、全力でいやいやをされた。 髪飾りは大事だとは聞いていたが、これほど嫌がるとは……別に奪って燃やそうというわけじゃないのに。 「でもリボンを取らないと綺麗にできないよ」 「いやだよ!!おりぼんはとっちゃだめなんだよ!!」 「ね、ちょっとの間外すだけだから」 「ゆ゛ぅぅぅぅ!!い゛やあぁぁぁぁぁ!!おりぼんどらないでねええぇぇぇ!!」 「じゃあおリボン汚いままで良いのね!」 「やああぁぁぁだああぁぁぁぁぁぁ!!ゆっぐりでぎないの゛ぉぉぉぉぉ!!」 「れいむのバカ! もう知らない!!」 「ゆ゛びぇぇぇぇぇぇん!!おにーじゃんのばがあぁぁぁぁぁぁぁ!!」 一通りトトロごっこを満喫した後、リボンを黙ってひょいと取り上げる。ついでにもみ上げの筒も。 ずっとリボンの汚れからストレスを受け続けるよりは、今少しだけ我慢して貰った方がれいむの為だ。 れいむは遊びじゃなくて本気で嫌がっていたらしく、僕の裸の尻に何度も体当たりしてきてくすぐったかった。 鬱陶しいので、湯桶に入れて湯船に浮かべておいた。お湯に落ちるのを恐れてれいむは動けない。 「ここでゆっくりしててね。リボン洗っといてあげるから」 「や、やべで!!おみずさんこわいよ!!それになんだかここはあづいよ!! おりぼんきれいきれいしなくていいからかえしてね!!ここからだじでね!!」 無視である。 その間にリボンに石鹸をつけてゴシゴシ洗ってあげた。レースがちょっとほつれたけど問題無いだろう。 数分後、湯桶の中を見てみるとれいむが茹っていた。うわー、って感じ。 お湯の温度44度だからなあ。桶の中でも熱いか。 確か小さいゆっくりって、加熱し過ぎると身体が固まって死ぬんだっけ? 意外と今、生死の境目なのかも知れない。ちょっと適当にし過ぎたか。 「ゆ・・・ゆっぐぢ・・・・おりぼん・・・・」 なんとまだリボンに執着していた。本当に大事なんだなあ、無くても死にゃしないだろうに。 このままにしておくと死なないにしても辛そうなので、リボンを付けるのは後回し。 洗面器に冷水を溜め、熱くなったれいむの身体を浸してやる。 「ひんやりー!!ぷんぷん、れいむをあついあついにしないでよね!!」 完全復活である。適当な生き物で助かった、とほっと一息。 そのまま冷水の中で転がすようにして、れいむのモチモチした柔らかな身体を洗ってやる。 「ゆっゆっ♪ひんやりすっきりー!」 れいむはくすぐったそうに目を細めている。段々かわいく思えて来たかも知れない。 洗面器かられいむを上げて、湯船の縁に置く。そして後ろを向かせてリボンを結んでやった。 「えーと、ここをこうして……よし、これで良いな」 「ゆゆっ!!おりぼんもれいむもきれいになったよ!!とってもゆっくりできるよぉ~~~!!」 「うんうん。やっぱりリボン洗って良かっただろ?」 「ゆん!!おりぼんがないとゆっくりできないけど、きれいきれいしたらすごくゆっくりだよ!!」 正面を向かせて筒を填めながら、どんな感じか見てみる。 うん……少し曲がってるかな。まあ少しだし、問題無いよね。初めてリボン結んだにしては上出来だし。 れいむは涙を流してゆっくりしている。ちょっとした事でも感動の涙を流すな。感動表現の天井が尽きるぞ。 体も綺麗になり、リボンも戻って来た。抱えていた不安が全て解消され、れいむの顔は安心に緩みきっていた。 パヂーン!! 「ゆあ゛っ」 その素晴らしいゆっくりぶりに、僕は猫だましの拍手を送った。だってゆっくりのこんな顔見たらねえ。 で、つるん、ぼちゃんである。ぶくぶくとあぶくを立てて、れいむは湯船に沈んでいった。 「いやー、良い風呂だった」 「ゆぐ・・・ぜんぜんゆっぐぢでぎながっだよ・・・もうおふろい゛やだよ・・・」 「まあまあ、そう言わないで。きれいきれい出来たでしょ」 まあ色々あってれいむを無事救出し、僕は湯船でゆっくりしたのであった。 熱湯に沈んだのがよっぽど堪えたのか、れいむはずっと辛そうな顔をしている。 少し心配になったが、ゆっくりの回復力なら明日の朝にはまた元気になっているだろう。 「ゆぅ、ゆぅ・・・れいみゅもうねりゅよ・・・」 疲労と眠気で口がうまく回っていない。重たそうな瞼がうっすら開閉している。 布団代わりにと箪笥からハンドタオルを取り出し、畳んで床に敷いてやる。 そこにれいむを載せ、更にその上からハンカチを掛けてやる。これでゆっくり眠れるだろう。 「ゆふ・・・あっちゃかいよ・・・」 「おやすみ、れいむ……」 「おやしゅみなしゃぃ・・・ゆふぅ・・・」 屈み込んで覗き込む、とても安らかなれいむの顔。誰だって眠い時にふわふわの布団に入れば、こんな表情にもなるだろう。 見ているだけでこちらまでゆっくりしてしまう、とろけるような柔らかな笑顔だ。 うっすらと開いている小さな瞼が、段々と閉じられていく。僕も眠くなってきたよ、れいむ…… バッシィーーン!! 「かひっ!!!?」 おやすみの猫だまし。つきかけていた寝息はキャンセルされ、その呼吸音を聞いただけで心臓に悪そうなことが伝わって来る。 とろとろと閉じられていた瞼はバチンと見開かれ、まだ明かりのついた部屋いっぱいを映している。 布団に入っている時に地震が起きたのを感じると急激に目が覚めちゃうけど、今のれいむはあんな感じに近いのかな。 ゆっくりにしてみれば目の前で爆音が響いてるんだから、近くに爆弾落とされたようなものだろうか。 「おやおや? あんな重そうにしてた瞼を一気に開けちゃうなんて、れいむは重量挙げ世界一だね」 「ゆっ・・・ゆぐっ・・・ゆえっ・・・」 見る見る内にれいむの目の縁に涙が溜まっていく。口は意思とは無関係にへの字に引き攣っているようで、喋りづらそうだ。 「どっ、どぼじで・・・どぼじでれいみゅをびっくりさせるのぉ・・・ゆっぐちさしぇてよぉぉ・・・」 「ゆっくりさせてるでしょ? 美味しいご飯もオモチャもあげたし、お風呂で身体を綺麗にしてあげたよ」 「でも・・・でもばちんってやられりゅよ・・・ほ、ほかのこちょはゆっぐちできちぇるのに・・・ ばちんってやられたらゆぐ、ゆっくちでぎないよ・・・」 「もう、こんなにゆっくりさせてあげてるのにまだゆっくり出来ないなんて。れいむは贅沢過ぎるよ」 嗚咽交じりに話すれいむに向かって、ヒュッ、と猫だましを寸止め。 びくりとれいむの身体が震えた。数秒置きにやってみても、その都度律儀に身体を強張らせる。寸止め遊びも楽しいなあ。 「やめっ、やめでねぇ・・・れいみゅ、れいみゅはおねむなんだよ・・・ゆっぐりねたいのぉ・・・・」 「うん、そうだね。今日は色々あって疲れたろ、ゆっくりおやすみ」 そう言って僕は立ち上がり、自分の布団へと向かう……最中に、何度かチラッとれいむに振り返ってみる。 もうそれだけでびくっ、びくっとれいむは全身を強張らせている。瞼も重いのにおちおち閉じられない。 少し離れた所に敷いておいた布団に入った後も、僕は時々頭を起こしてれいむの方を見る。 そうして視線を送るだけで瞼が押し開けられ、身体が小さく伸び上がる。 「ゆひっ・・・お、おにーしゃんもはやくすやすやしてね・・・れいみゅをねかしぇてねぇぇ・・・」 れいむはぽろぽろと涙をこぼして敷き布団代わりのタオルを濡らし、その柔らかだった表情は不安によって歪められている。 僕がれいむの方を見ていない間も、僕のことが気になって全然ゆっくり出来ていないみたいだ。かわいいやつめ。 そのまま二時間ぐらい互いに眠れない時間を過ごしたが、いつの間にかれいむは泣き疲れて眠っていた。 僕も初めてペットの世話をした疲れからか、自然と瞼が下りていった。 これで思う存分猫だましが出来る、しかもリアクションも強くて意外にやりがいがある。良い買い物をした。 そんな風に思いながら、僕は眠りに落ちていった。 翌朝。僕が目覚まし無しで目覚めると、横ではれいむがまだすやすやと眠っていた。 今日は朝から大学に行かなきゃならない。これから家族で朝ご飯にするんだから、れいむには起きてもらわないと。 「おーい、れいむさーん。朝ですよー。起きてくださーい」 「ゆぅ・・・・ゆふ・・・・・すやすや・・・・ゆぅん・・・・・」 優しく起こしてみるも、気持ち良さそうに寝息を立てている。「すやすや」って言ってるもん。はっきり。 でも朝は起きなくっちゃあならない。それが我が家のルールである。うっかり昼夜逆転とかしてみろ、酷いことになるぞ! 「れいむー、起きてねー!」 「すーや、すーや・・・・ゆん・・・・・ゆぅ・・・・」 強めに呼びかけても、まだ起きる気配は無い。 パァーン! 「ゆがひっ!!!??」 飛び起きた! ハンカチの掛け布団を払って飛び起きた。目覚ましには猫だましが一番、と。 幸せだった夢の風景でも探しているのか、辺りをきょろきょろと見回しているれいむ。 しかしそこにいるのは僕だけだ。僕の姿を認めると、れいむの表情は一気に暗くなった。失敬な。 「おはよう、れいむ。これから朝ご飯を食べるよ」 「ゆっ、ごはん・・・」 おや? 食い意地が張っているれいむなら、ごはんと聞けば飛びついて来そうなものだけど。 低血圧なのかも知れない。低餡圧かな? 何にせよ、朝ご飯はしっかり食べた方が良い。 僕から逃れようと身をよじるれいむを捕まえて、テーブルの上に載せてやる。 今日の朝ご飯はフレンチトースト。砂糖もたっぷりかかっていて、甘いもの好きのゆっくりにはたまらない一品だろう。 しかしれいむには、昨日のような飛びかかるような勢いは無い。「いただきます・・・」と呟き、 ちびちびとトーストを食んでいく。次第に「むーしゃ、むーしゃ」と幸せそうな顔になるものの、「しあわせー♪」とはやらない。 朝食を終え、持ち物の確認をしている間にれいむにはおもちゃを与えた。 しかし横目に見る限り、昨日のように溌剌と遊ぶれいむの姿は見られない。 何か怖いものに近付くように、おもちゃに身体の端を触れさせては離れる、というような行動を繰り返している。 いざ出かける段となったが、まだ少し時間に余裕がある。 僕はれいむと少し話をしてみることにした。 「れいむ、朝から元気無いけどどうしたの?」 「ゆぐっ・・・」 僕がれいむに目線を近づけようとしゃがみ込んだだけで、れいむは親にぶたれる子供のように身を屈める。 昨夜の状態がまだ続いているみたいだな。ゆっくりは忘れっぽいと聞いていたのだが。 問い質してみると、れいむは涙ながらに語り始めた。よく泣く奴だ。 「だっで・・・だっで、ゆっくりしてるとばちん、ってやれれ、やられりゅんだもん・・・・ ごはんやおかしをたべると、ばちんってやられるもん・・・おもちゃをもりゃ、もりゃうとばちんされるもん・・・ ばちんってさりぇ、さりぇたら、すごくゆっぐち、でぎなくなるんだもん・・・ゆっぐ・・・ゆえええぇぇぇぇ・・・・」 うーん、何を言ってるのか解らないぞ。でもお饅頭の言うことだし、ちょっとこっちで考えてみよう。 もしかしたら、昨日の猫だましに関する記憶が全部まずい具合に繋がっちゃってるんだろうか? お菓子をあげる時に猫だましもしたし、ご飯の時に猫だましして全身ケチャップまみれになったしな。 「ゆっくりする→猫だまし」と「猫だまし→ゆっくりできなくなる」がなぜか結び付いて、 「ゆっくりする→猫だまし→ゆっくりできなくなる」、即ち「ゆっくりするとゆっくりできなくなる」になったのか。 実際、風呂や寝る前には時はその公式通りになったので、多分それで確信へと至ったのだろう。 また湯船に落ちたトラウマが蘇るため、単純に驚かされること自体も耐えられなくなっているようだ。 「でもなあ、お前はゆっくりだろう? ゆっくりがゆっくりしてないでどうするんだ」 「なにいっでるの・・・おにいざんがばちんするからでしょおぉぉ・・・・・」 「そうか……じゃあ解った。もう猫だましはやめるよ」 「ゆ・・・?ほんとう?」 「ああ、俺もペットのゆっくりにはゆっくりしてて欲しいしね」 「ゆゆ・・・ありがちょう・・・」 バチン!!! 「ゆっひっ!!ゆがああぁあぁぁぁぁあぁぁ!!おにいざんいった!!もうばちんしないっでいっだぁぁぁぁぁ!!」 「え~、だってれいむが凄く安心した顔してたからつい……でもびっくりしてるれいむはカワイイよ」 「れいむびっくりじだぐないよぉぉぉぉぉぉ!!!どぼじでごんなごどずるのおぉぉぉぉぉ!!」 「んなこと言われてもさあ、僕は猫だましをする為に君を買ったんだよ」 「ゆ゛・・・・な、なに・・・・・?」 「猫だましするなって言うなら、れいむを飼う意味が無いわけだよ。捨てるか潰すかしちゃうよ」 「ゆ゛ゆ゛!!やべでね!!やべでね!!れいむをごろざないでね!!でいぶじにだぐないぃぃぃぃ!!」 バチン!! 「ゆびゃびゅっ!!!??」 「そんなことしないよ。せっかく猫だましが楽しくなって来たのに……今まで何となくやって来たけど、楽しいのなんて初めてなんだよ。 多分もうれいむに猫だましをしないと満足出来ないんだよ。それにれいむにご飯や寝床を上げるのも多分僕だけ。 これって素敵な共生関係だと思わない?」 「ゆぎぃ・・・ぞんなのゆっぐりできないよ・・・れいむもうびっくりしたくないよ・・・」 「びっくりするのが君の生存意義なんだって。まあ『ゆっくり』と『びっくり』で一字しか違わないし、その内慣れるでしょ。 慣れたらまた新しいゆっくりに替えると思うけど」 「ゆ゛ぐ・・・おにいざん・・・・」 バチン!! 「がひゅっ!!??」 「あ、そろそろ出かける時間だ。急がないと」 「ゆゆっ!!れ、れいむおるすばんしてるよ!!ぜったいににげないからね!!まどはあけておいていいよ!!」 「いや、学校で不意に猫だまししたくなった時に困る。もう友達とか教授相手にやるわけにはいかないからね。 君は携帯猫だまし機として持ち歩くことにしよう。ずっと一緒にゆっくりしようね!」 「やべでね!!れいむおうぢにいるの!!おにいざんとあそびにいぎだぐない!!やだよおぉぉぉぉぉ・・・」 大事なパートナーであるれいむを、購入時に入れていた小さくて丈夫な箱に収め、通学用カバンに放り込む。 れいむさえいれば、長年の性癖ともおさらば。新たな猫だましライフ……いや、ゆっくりだましライフが今始まるんだ。 朝の陽光は、僕らを祝福するように明るかった。僕は新生活への一歩を今、踏み出した。 FIN このSSに感想を付ける
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ゆっくりいじめ系1812 ゆっくりの靴 前編より続く とりあえず仕事部屋に放置してきたまりさ二匹は気がついていたのか俺が入ると騒ぎ出した。 「ゆゆっ!!お兄さんなんでまりさこんなところに入れられてるんだぜ!?」 「そうだぜ!ここはゆっくりできないからさっさとだすんだぜっ!そしてお兄さんは今日のご飯を用意してくるんだぜ!」 全く太ぇゆっくりだ・・・ 「なぁお前達。知ってるのか?お前の仲間のれいむが死んでしまったんだぞ」 「ゆゆっ!仕方ないんだぜ!れいむとちぇんはまりさ達がご飯食べるのを邪魔したからせいさいしてやったんだぜ!」 「げーらげーら!これでまりさ達のごはんの取り分が増えたんだぜ!」 「そうかそうか・・・わかったよ」 こいつらがどうしようもないゲスだと言うことがね。 「そんなことより早くこの箱から出すんだぜ!」 「ゆっくり出来ないんだぜ!」 いい加減、虐待をするつもりは無かったがあまりにも自分勝手なまりさ達に対してお兄さんの怒りも有頂天をむかえてきた。 「そうか・・・ゆっくり出来ないのか。・・・・・・・・・お前達にゆっくりする資格なんかねぇッッッ!!!」 バシンッ!! 大きな怒鳴り声とともに片方のまりさの箱の上部を思い切り叩き付ける。 「ゆひっ!お、お兄さんどうしたの・・・だぜ?」 「ぴぃ!お兄さんどうして怒ってるの?」 お兄さんの恐ろしい剣幕に二匹は素の口調に戻りかける。 「お前達・・・どうして俺の藁を食べたんだ・・・?ちぇんとれいむはお前達が藁を食べようとしたのを止めたんだろう?」 「ゆっ!そ、それはまりさ達お兄さんのお仕事の手伝いしたから藁は当然のほうしゅ・・・」 バシンッ!! またしてもお兄さんは答えていたまりさの箱を叩き付ける。 「お前達の、仕事は、俺の藁を、食い散らかすことなのか・・・!?」 流石にやばい・・・そう感じたまりさ達は媚びた笑いを浮かべながら言い訳を始める。 「ち、ちがうんだぜ・・・あ、あ、あれは・・・・・」 「まりさじゃないんだぜ。まりさ食べてないんだぜ!!」 あぁもういいや。 お兄さんはもはや何を話しても仕方ない、そう理解した。 「そうかそうか。もういいよ。お前達には新しい仕事をして貰おう」 そう言ってお兄さんは一匹のまりさを箱から取り出した。 「ゆっ?お外に出られたんだぜ!」 「まりさもっ、まりさも出してね!出してねっ!」 外に出して貰ったまりさは安心したような顔をしていた。 しかし、急に強い不可がかかった・・・そう思った瞬間に地面に激突していた! ズバンッッ!! 「ッッッッ!!!」 「ゆぇ・・・?」 顔面から地面に叩き付けられた方のまりさは顔が下になってしまっているので悲鳴も上げられずに地面に張り付いていた。 一方、箱の中にいたまりさの方は何が起こったのか理解できずに目を白黒させていた。 お兄さんは何も言わず容赦なく地面にひっついているまりさの髪を引っ張り自分の顔の高さまで持ち上げる。 「ゆ”っゆ”っゆびっ!・・・い、いだいよぼぉーーー!!」 と、声を上げた瞬間また先ほどと同じ不可を感じ・・・・ズバンッッ!! またしても地面に叩き付けられる。 「ゆべっっ!ゆ”ゆ”ゆ”っ・・・・」 今度は顔の側面から叩き付けられ、呻き声を上げている。しかし、やはり容赦なく髪を引き上げるとまた地面に叩き付けようとする。 「お、おにいざん何やでるのぉぉーーー?!ばりざが痛がっでるよ!やべてあげでねっ!」 「ん?まぁ次はお前の番だからゆっくりまってろな?」 「どぼじでぞんなごどずるのぉぉぉーー!?」 「それは後のお楽しみってね☆」 そう言ってお兄さんはまたまりさを地面に叩き付ける。 バシンッ!ズシンッ!ズバシッ! ただの作業の様に地面に繰り返し叩き付ける。 ゆっくりというのはその性質上あまり堅くはなく指で刺したり、包丁で切ったりして餡子が減ってしまうと比較的簡単に死んでしまう。 しかし、こういった面での衝撃に対しては比較的頑丈に出来ていて、苦痛を与えるための虐待としては割とポピュラーな方法になっている。 まぁお兄さんがそう言った事を意図してやっていたわけではないが。 こうしてしばらく強かに地面に叩き付けられていたまりさだが、次第に声も上げなくなってきた。 そろそろか・・・そう思ったお兄さんは次の作業に移る。 地面に張り付いたまりさを拾い上げて机の上に乗せる。 まりさの顔が・・と言うか体全体が打ち据えられて真っ赤になっている。 「ゆひぃ・・・ゆひぃ・・・ゆ”っ」 「お兄ざん!もう許じであげでねぇ!ばりざが死んじゃうよっ!」 そう言いながら透明な箱に入っているまりさが訴えかけてくるが黙殺。 「さて、次は・・・・っと」 そう言いながらお兄さんはまりさの帽子を取ってそれを自分の手にはめる。 「・・・ゆっ・・?・・・・か、返して・ね・・・ばりざの・・・お帽子がえじで・・ね・・・・・」 帽子を取られたのがそれ程不快なのか、瀕死の(と言っても体が痛いだけで餡子に傷ついてないので死ぬことはないが)状態でも反応を示す。 「あぁすぐに返してやるよ・・・」 お兄さんはまりさの頭頂部に帽子のてっぺんを当てると、少しずつ、少しずつ帽子をまりさの頭の中に押し込み始めた。 先ほどから地面に叩き付けていたおかげで全体的に柔らかくなっていたまりさの頭は比較的簡単にお兄さんの手を受け入れはじめた。 皮を破らないように、ゆっくりと慎重に・・・。 「ゆ”っ・・ゆっ・・ゆ”ゆ”ゆ”・・・ゆ”っ・・・・・や、やべっ・・・で・・」 ある程度、手首が埋まるまで帽子を頭につっこんでみた。 やはり餡子が減ることが無いので死ぬことはあり得ないが、頭の中に手を入れられるのは相当苦痛なのだろう ゆっくりと呻き声を上げ続けている。 そしてもう一方の箱のまりさは目の前で行われている残虐劇(ゆっくり達にとってはだが)を目の当たりにし箱の隅で恐怖に震えていた。 「ゆ”っゆ”っゆ”っ・・・」 手首まで入った腕を今度は手首を返して顔面の方に少しずつ掘り進める。 体の中に手首分以上の体積が入ったのでまりさの体はどこか膨らんで来たかのようになっていたが、内側から顔面に向けて異物が侵入していたため 顔の形が変わり始めてきた。 「ゆべべ・・・もうやべでぇ・・・・・・」 まりさが声を上げるたびに内部でお兄さんの手はこそばゆいような振動を感じていた。 「おいおい、くすぐったいぞww。お前こんな所で声出してたのか・・・」 どうやら口の中というか・・・むしろ内部の餡子自体が振動して音を作っているらしい。 だからこいつらが森の中で話しているだけですぐに場所が分かるのか・・・ ある意味、餡子スピーカーというやつだ。ウーファー付きの。 「よぉそっちのまりさ、見えるか?なんかこいつ腹話術人形みたいだな!」 そう言ってお兄さんは頭の中で手をグーパー閉じたり開いたりする。 するとまりさは・・・・ 「ゆあ”っ!ゆあ”っ!」 と、動作に合わせて声を上げる。 「まるで出来の悪いカエルの玩具みたいだな!!はははははははっ」 「ゆぅぅ~・・・もうやべであげでねぇ・・酷いことじないでね・・・」 「大丈夫大丈夫!どうせお前らなんて餡子がでなきゃ死なないんだろう?だから俺がお前らみたいな屑饅頭を有効活用してやるんだ。ありがたくそこでお前の番を待ってろ」 「ど、どぼぢでごんなごどずるのぉぉーーー!?」 もう自分の理解の範疇を超えた恐怖に完全にすくみ上がっているまりさ達だ。 そこでお兄さんはどうしてこんな酷い(ゆっくり主観では)事をするのか、ゆっくり、やさしく説明してやることにした。 「お前達が藁を食べようとしたときにれいむとちぇんは止めようとしなかったか?」 そう言って既に穴の広さがかなり広くなって完全に顔の形が変わってしまっているまりさを自分の顔の前に持ち上げた。 「ゆ”っ、ゆひっ・・・ぢぇんがまりざの・・・邪魔をしたんだよ・・・。だがらまりざがばがなぢぇんをやっづげだんだよ・・」 「そうだよ!れいむがまりさの食事を邪魔してきたんだよ!ぷんぷんっ」 藁を食べること自体が悪いことだと忘れてしまっているまりさは、食事の邪魔をしたれいむ達が悪い。 自分たちは無罪だから責めるなられいむ達を責めろと言わんばかりの態度で言い返してきた。 「そうかそうか、つまり悪いのはお前達の食事の邪魔をしたれいむとちぇんなんだな?」 「ぞうだよっ!ばでぃざは悪ぐないよ!!」 「・・・・お前達が食べた藁はな、これから美味しいご飯に変わるはずだったんだぞ?わかるか? お前達が食べて無くなってしまった美味しくない藁はな、俺が靴にしてとってもゆっくりできるご馳走になるはずだったんだぞ」 「ゆ”えっ?」 「ゆゆゆっ!?それじゃあまりさ達が食べたのは・・・」 「そう、美味しいご飯になるはずだった美味しくない藁だ。しかもお前達はそれを食べたいがためにお前達の仲間だったれいむとちぇんに 酷いことをして、あまつさえれいむを殺したんだ」 あまりの腹立たしさに思わずまりさの頭の中で餡子ごと手を思い切り握りしめる。 ビクンッ「ゆ”っっ!!ゆげぇぇ・・・」 「ご、ごめんなざいぃぃぃーーー。もうじないがらゆっぐりゆるじでぇええぇぇーー!」 「いーやだめだ。お前達は藁の代わりに美味しいご飯と交換する事になりました。で、今年の冬はちぇんと一緒に美味しいご飯を食べて過ごす事にした」 「ゆびぇぇぇーーーー!!!だじゅげでねっーーー!でいぶおねえじゃーーんっっ!!ぢぇんおねえじゃああーーーん!!」 自分が殺してしまったれいむやちぇんに助けを求める。流石餡子なだけあって記憶力が全くないな。 頭に穴の空いた方のまりさの整形はおおむね完了したのであとは外面の形を整えるだけだ。 まりさをもう一度机の上にのせ、鼻のあたりから底に向けて丁度中で手首の返しのあたりから底面に向けて一本。 同じく鼻のあたりから後頭部の方に向けてもう一本、藁で作ったロープで縛り上げて丁度「靴」の型に形成した。 「ゆ、ゆ”ぐっ・・・ぐるじい・・・・っ」 これで片方は完成・・・と。 お兄さんは靴状になったまりさ、靴まりさを透明な箱に移して次のまりさに取りかかる。 次は自分だ・・・そう言われていたまりさは恐怖で逃げようとするが当然狭い箱の中で逃げられるはずも無くすぐに捕まる 「やべでぐだざいぃぃーーー!まじざ靴になんでなりだぐないよぉぉーーー!!」 「だーめだめ。お前は靴決定。精々苦しんで反省してねっ!!」 ズバンッッ!! そして焼き増しの悲劇が始まった。 翌朝。 「ゆぁぁ~・・・お兄さん朝なんだよ!ちぇん元気になったんだよーわかるよー」 「んん・・・おぅちぇん大丈夫か?」 「ゆっくり元気になんたんだねーわかるよー!」 「そうかそうか、良かったな。それじゃあ朝ご飯にするか」 「朝ご飯なんだねー!わかるよー」 「わかるわかるって・・・何がわかってんだか・・・」 居間に移動してきたちぇんは不思議なモノを二つ発見した。 「ゆゆっ?お兄さんあれなーに?わからないよー?」 「ん?アレか?・・・アレはまりさだったモノだ。今は靴だがな」 「まりさは帽子をかぶってるよー。わからないよー?」 そう、今には帽子を頭の中にねじ込まれ靴状に形が変わった靴まりさが2足おいてあった。 帽子で個体識別するゆっくりは帽子が見えないと個体が分からないらしい。 「う~ん、それじゃあちょっと見せてやるか・・・」 言ってお兄さんは靴の足の入れ口をちぇんに見せてやる。 すると、確かに黒い帽子のようなモノが見えているがすでに帽子が帽子の役割を果たしていないがなんとちぇんには分かったらしい。 「ゆゆゆっっ!?ま、まりざーーー?!どうじだのー?わがらないよぉーー」 「ゆ”っ・・・ちぇんお姉ぢぁん・・だずげでぇ・・・」 「ゆっぐりばでぃざが悪がっだでず、だずげでぐだざいぃぃーー・・・」 昨夜体を手ひどく痛めつけられ、あまつさえ頭の中に手を突っ込まれ息も絶え絶えだった二匹がちぇんの声に反応して目が覚めたようだ。 「おにいざん!まりざが変になっちゃったよー!わがらないよぉーー?!」 「あぁ、まりさ達には藁を駄目にされたからな。代わりに売る物がないとお兄さんとちぇんは冬を越せなくなるんだ。 だからまりさ達には靴になって貰って今年の冬のご飯と取り替えて貰うことにしたんだ。ゆっくり理解できたか?」 「わ、わかるけど・・・まりさが可愛そうだよー・・・」 「まぁ仕方ないだろ?あいつらが藁さえ食べなければみんなで楽しく冬を越せたのに勝手に藁を食べたんだから」 「わかったよー・・・まりさ達は可愛そうだけど悪い子はおしおきされるんだねー」 「ぞんなごど言わないでだずげでぐだざいぃーー」 「ゆっぐり許じでねぇーー?!」 「はいはい、まぁ仲間として来たから最後にちぇんと話す機会だけ作ってやったけど見苦しい奴らだな。まぁこれで声を出すのは最後だから悪あがきでもしてたらいいぞ」 そう言ってお兄さんは自分たちの朝食とある物を取りに台所に行って来た。 「よし、ちぇんは先にこれを食べてていいぞ」 まずはちぇんに餌として野菜の皮をやる。 そしてまりさの口には・・・ 「じゃあ次はお前達の口にはこれだ」 そう言って焼けた鉄棒の棒を無理矢理口につっこむ。 じゅぁあああーーー!!! 「ゆぎゃあああーーーーー!!!だ、だずげっ・・・・・っっ」 熱された鉄棒は容赦なくまりさの口を焼き、次は底面をジグザグに焼き付ける。 よほど痛いのだろう。目から涙を流しながらびくんびくんと震えている。 ちなみにジグザグに焼きを入れるのは滑り止めのために返しになるような痕をつけるためだ。 一匹目のまりさの焼き入れが終わり、次のまりさに取りかかる。 「や、やべでねっ!までぃざに酷いごどじないでねっっ!?」 「はいだーめっ」 じゅぅぅーー! 「っゆ”ぅーーー!!!いじゃいよぉーーー!!!」 「ん?火力が弱くなってきてるのかな?仕方ない念入りにやるか・・・」 仕方なくお兄さんは長時間をかけてゆっくりまりさの口と底を焼き入れしていった。 その目の前でちぇんは久しぶりの豪華な食事に夢中だった 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせぇー!」 自分が半殺しにした相手にすら助けを乞うまりさ 「だずげでぇーーー!ぢぇんおねえじゃーん!!」 「わかるよー まりさは助けて欲しいんだねー。でもまりさは悪い子だからそこでゆっくり反省するんだよー」 「どぼぢでぞんなごどいうのぉぉぉーーーー!?」 「そりゃお前が人の商売道具勝手に食い荒らすからだろうが」 そう言って容赦なく熱の下がってきた焼きごてを口につっこみ二度としゃべれなくする。 「ゆぐぐぅぅーーー!!」 二匹とも呻き声しか上げなくなり、まぁ形も靴状になったのでとりあえず試し履きしてみることに。 左足・・・右足・・・・ 「「・・ゅっ・・・!!」」 うむ、懸念してたうるさい声もしないし何より履き心地がたまらない。 幻想郷ではお金持ち以外は足袋など穿かないのでそのまま藁の草履を穿くのだが、それに比べてまりさの帽子の肌触りや餡子の柔らかさと言ったら・・・ まさに上出来。そして何よりゆっくり自体は人間とそれ程体温が変わらないので非常に温かいのだ。 若干重さはあるが、藁靴にかんじきを合わせて穿いているのよりも少し重たいくらいで冬用の履き物としてはそれ程気にもならない。 試しに外に出てみる。 「ゅ」「ゅぅ」「ゅ」「ゅっ」 左右左右と一歩進むごとになにやら呻き声を上げ、なんだか涙も流しているが履き心地は最高である。 普通冬と言えば足先や手先が冷たいのであまり外へ出ることが出来ないんだが、これさえあれば冬場でも狩りに出かけることができて猟師達には売れるだろう。 しばらく試し履きをして家に戻ったが、きっちり焼いていったのでふやけることもなかった。 「おーいちぇん。ちょっとこれから外にこいつら売りに行くが付いてくるか?」 「わかったよー、一緒にいってまりさ達にお別れするよー」 こうして作った靴まりさは里でも有名な名家の稗田家のお嬢さんが通常の藁靴の10倍ほどの値段で買い取って行った。 最初はそんなに高値で売るつもりは無かったが、お嬢さんが・・・ 「これは素晴らしい物です。是非妥当な価格で買い取らせてください!」 と何故か頬を紅潮させながら言ってきたので、まぁ知識人がそう言うならそうなんだろうとその値段で売った。 しばらくて、稗田家と言う名家のお嬢さんが使っていると言うので里の豪商や名家の連中がお兄さんの元に新しく靴を作ってくれるように 買い求めに来たのでお兄さんはちぇんと協力して冬眠中のゆっくりを狩りに行き、沢山の靴を売りさばいたお兄さんは今年一冬で沢山儲ける事が出来ました。 また、一部の要望で声を潰さずに悲鳴を上げる靴ゆっくりも開発するようになりましたとさ。 「ゆべぇっ」「ゆぐっ!」「だずげっ」「たすげで」「ゆぎぃ」「ゆ”っ」 こうしてこの冬は里の中でゆっくりの悲鳴と呻き声がこだましていました。 作者:ユギャックマン
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※俺設定注意 ゆっくり家庭料理 今日俺は大バーゲンで買ってきたゆっくりれみりゃ1体をまるまる使って料理しようと思う。 さて、まずは今日のメインのゆっくりれみりゃだ。 「ぎゃお~、た~べちゃうぞ~!!!」 今日にもお前はた~べられちゃうぞ~!!!という突っ込みはさておき、 まずは下ごしらえだ。 服を脱がす。 「うー!こうまかんのおぜうさまのれみりゃになにするんだどー!」 下ごしらえです。 ゆっくりの飾りにおいしいものはほぼない。 ただの皮どころか、泥臭い某国産餃子のような味がする。 プロがせいぜい料理できるのがゆっくりふらんのへんちくりんな棒だという。 さて、このれみりゃは無洗れみりゃではない。 ということであらってやる。 「う~♪きもちいいど~♪さくりゃ~♪もっと~♪」 『さくりゃ』とは誰だろうか。とりあえず水につけっぱなしにしておく。 その間別の作業をしないといけないからだ。 「「「「「さあ調理しなさい!!!」」」」」 調理用に遺伝子をいじくって調理されることを本能とするゆっくりちぇんだ。 ちぇんであることに意義がある。中身はオリーブオイルで皮はレタスのような味がする。 要するに付け合わせだ。 ちぇん達の言葉に応じてゆっくりを調理する際の俺の決まり文句を言う。 「ゆっくり調理させてね!!!」 ふう。終わったか。 慣れたとはいえ貴重なオリーブオイルをこぼさないのは一苦労だ。 とりあえずちぇん皮の付け合わせができた。じゃあ早く連れてこなきゃ。 メインディッシュを 「うー?このぢぇんでべさせてくれるのかどー?」 ぢぇんって誰だ、それとでべさせるって何だ。 まあ、いいや。れみりゃをまな板の上にのせる。 「う?べっどにしてはかたいど~♪かえるんだど~♪」 そういってるれみりゃに右手のナイフで語りかける。 「ゆっくり調理させてね!!!」 そしてその愛らしい首と体を 叩き斬った。 「う゛!うあー!うあー!」 首を切った瞬間、れみりゃは瞬間的に退行する性質がある。 「どおして?れみりゃとからだがー!!」 どおしても糞も、あんた食材ですから。 次に邪魔なので人間でいう「子宮」に値するものを取り除く。 排泄物よりまずいんで。 「ひゃ!れみりゃのはずかしいところが!!」 恥ずかしいんだったらなくなっていいんじゃないでしょうか。 ちなみに顔は厨房の俺の後ろで調理のさまを見ている。 これがどう怖いのかは知らないが、ゆっくりは精神攻撃でおいしくなる性質がある。 というわけだ。 次に足を切り落とす。 ちなみに今回は出来上がりのものの関係上、輪切り。 「おにーさんなんでれみりゃのあしきるの!しつじのくせに!」 本当のレミリアがこう言っているなら 「俺は小悪魔どころか、悪魔ですから。」と言っていることだろう。 まあ、これはそれによく似た饅頭なので関係ない。 とりあえず、あとはいったん放置して、サラダを完成させる。 足の輪切り投入。 そしてちぇん油をかける。 はい、付け合わせの「れみりゃとちぇんの仲良しサラダ」(一人当たり456kcal)出来上がり。 そしてメインの続きだ。 ああ、れみりゃはいちいちうるさいのでボンレスハムのひもで縛っておいた。 全部みじん切り。 単純に思えるが、別々の体パーツでも同じ大きさにしておかなければいけない。 切った後の肉まん部分を取り出す。 そしてマッシュポテトとその肉まん部分を混ぜてポテトサラダみたいにする。 「さあ、ゆっくり意識失ってね」 れみりゃの頭をかっ捌いて、肉まん部分とポテトサラダみたいなのを入れ替える。 頭をボンレスハムのひもで閉じる。 そして蒸し焼きにして… 完成!「苦痛のぽてみりゃ蒸し焼きサラダ」(一人分792kcal)! 試食してみた。 「…まず。新メニューにはならんな」 今日の実験料理は忘れることにした。 某所で書いたコイキングの料理のやつを強引に改変してみたらこれだった。 もともとそれ自体がやっつけだったんで、さらにやっつけ度増し。 すんません。他のハイレベルなSS書きさんのSSを見てすっきりしてください。
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「ゆっへっへっへ、これだけあれば冬もゆっくりできるんだぜ!」 朝からの初雪で白く染まった人里外れの森。 大木の根元を掘り下げた洞窟で少し大きめのゆっくりまりさは高く詰まれた食料を前に下卑た笑みを浮かべていた。 「ゆっ。 じゃあれいむたちもう人間から食べ物を取ってこなくていいんだね?!」 「ああ、いいぜ。 これだけあればこの冬も越せるんだぜ。」 この洞窟にはこの少し大きなゆっくりまりさとその家族と他にゆっくりれいむの家族が住んでいた。 ただ数も多く、身体も皆大きいまりさの家族が穴の中心で踏ん反り返っているのに大して、れいむの家族は部屋の隅でお互いを寄せ合うようにしている。 この住処の力関係は歴然だった。 「やったねおかあしゃんこれであんしんしてゆっくりできるよ!」 とはいえこれでこの冬は一安心だと思ったのか、れいむの家族も安堵していた。 「ああ、ゆっくりできるぜ! ただしお前らは外でだけどな!」 「ゆっ!?」 言うが早いかまりさの家族は総がかりでれいむ達を体当たりで外にはじき出してしまった。 このまりさ一家、秋の終わりにこのれいむ一家の住んでいた洞窟に入り込んできて我が物顔で居座ると、 その大きな身体でれいむ一家を脅しては自分たちの食料を集めさせていた、いわゆるゲスまりさと呼ばれる種類であり、さらに最近ではもっと美味しいものをと言い出しては危険な人里から人間の食料を調達させていた。 「お前らはもう用済みなんだぜ! そこでゆっくり凍え死ぬといいんだぜ!」 『ゲラゲラ!』 ゲスまりさ一家は洞窟の入り口でそんな勝ち誇り、下品な笑いを吐いている。 れいむ一家は仕方なく雪の中せめて、住処だけでも見つけられないかと洞窟を後にした。 一方人里。 「かさはいらんかね~ かさはいらんかね~ 丈夫なかさだよ~」 年の瀬で皆忙しく買い物をする中、傘を売る老人がいた。 もっとも忙しい年の瀬、雪が降り出しているとはいっても今傘を買おうなんて思う人間はいない。 それでも老人は自分の年の瀬の用意をしなければと懸命に声を出しながら商店街を歩いていた。 …と、突然肩を乱暴にどかされ足腰の弱い老人はそのまま転倒してしまった。 「おいジジイ、マジ邪魔なんだけど。」 雪に倒れた身体を持ち上げて声のする方を見ると食料を乗せた荷車を引く青年の姿がある。 「へえ、すみませんでさぁ。」 この青年は里の庄屋に奉公に来ていたが素行も悪く、問題ばかり起こす事で有名だった。 とは言え忙しい年の瀬。 そんな青年でも何とか使わなければ手が回らないと、庄屋の番頭は仕方なく青年を買い物に行かせていた。 「はあ? マジすみませんじゃねえよこのボケ!」 「ぐうっ!」 この寒い中使いに行かされ、重たい荷車を引かされていた青年は機嫌が悪く、その捌け口を蹴りという形で老人にぶつけた。 もっとも、奉公に来ているからには仕事をこなすのは当たり前。 機嫌を悪くする時点でどうかしているのだが…。 「たくっ、傘なんざマジ売れもしねえのに歩いてるんじゃねえよ、マジ邪魔だっつーの。」 トドメとばかりに痛みで動けない老人に唾を吐いて尚もブツブツ言いながら去っていった。 人間にもゲスはいる。マジで。 しかし、確かに傘が売れないという点は青年の言うとおりだ。 老人は起き上がるとトボトボと商店街を後した。 「おかーしゃんさむいよお…」 「ごめんね、ゆっくりがまんしてね。」 激しさを増す雪の中、れいむ一家は住処も見つけられず、しだいに降り積もる雪に体力を奪われ、力尽きようとしていた。 「おや、ゆっくりかい。 こんな雪の中に何でまた…。」 人間だ、相手は老人だが今の自分達は戦うことは愚か逃げる事も出来ない。 れいむ一家は死を覚悟した。 老人は百姓である。 ゆっくりと言えば百姓にとっては田畑を荒らされるので目の敵なのだが、 この老人の畑はゆっくりの生息地からは遠かったので特に荒らされたりすることも無く、老人はゆっくりにそれ程嫌悪を抱いていなかった。 だからこれが普通の青年や他の農家だったらトドメを刺している所だが、元々人が良く、心優しい老人はそうはしなかった。 「ゆっくりと言えどこんな雪の中じゃ寒いじゃろうて、こんな物でよければどうじゃろうか?」 それどころか彼はれいむ達に頭の雪を払いながら売れなかった傘を被せていく。 散々いたぶられて殺されるかと思っていたれいむ達は予想外の老人の行動に呆然とし、全員に傘を被せてくれるまでじっとしていた。 幸いある程度大きくなったれいむ一家は全員サイズも違わず、傘はいい具合に頭を覆ってくれる。 「おじいさんありがとう!」 「おじいさんはゆっくりできるひとだね!」 れいむ達のお礼を聞いて老人は満足そうに笑うと、雪の中姿を消した。 「あークソ、マジだりいよ。 あのジジイもうちょっとマジぶん殴っておくんだったなあ。 つーかあの庄屋のオヤジとかありえねえだろマジで。 マジこんな雪の中使いに行かせんなつーの。 マジさっさと死ねや。」 商店街から庄屋の家に向かうには人通りの少ない人里の端のを進まなければいけない。 青年は相変わらずやたら「マジ」の入った頭の悪そうな文句を一人垂れ流しながら荷車を引いていた。 ガコンッ 「ん?!」 唐突に荷車に違和感を感じ、青年が後ろを見ると荷車がかなり傾いている。 雪の中、積雪に隠された岩に乗り上げたのだろう。 普通ならこんな物に気づかないワケ無いのだが独り言に夢中だった青年は気づかず、荷車は今にも横転しそうな所だった。 「ちょっ、うわマジやべえって! うわ…!」 そんな倒れた荷車の角に頭をぶつけて青年は気絶してしまった。 傘を貰ったとは言えれいむ一家の事態はそれ程好転しない。 住処が見つからない以上ほんの少し死期が伸びたに過ぎなかった。 「ゆっ、おかーさんあれ何?!」 視界の悪い雪の中子供の一匹が青年の倒した荷車を見つける。 幸いにも青年はまだ気絶していた。 「おかーさんごはん一杯だよ!」 「ゆっくり運び出そうね!」 れいむ達は思わぬ幸運にはしゃぎながら、横転して荷車から落ちた大量の食べ物を寄り添って使える面積を大きくした頭の上に乗せた。 傘は一匹だと斜めになっているので物を乗せられないが、何匹も寄り添えば元々面積は広いので多くのものが運搬出来る。 長い間ゲスまりさにこき使われていたれいむ達は運搬に慣れていたのでそういった知恵も働いた。 「ってててて… マジ(い)ってえわ。 何なんだよマジで…ってうおい! マジどうなんってんだよ?!」 雪の中目を覚ました青年が荷車を見ると荷物がはほぼ全て無い。 急いで辺りを見ると雪の中帽子に荷物を載せて遠ざかるゆっくりの影があった。 「てめえらマジなにやってんだよ!? オイ、マジ待ちやがれ!」 急いで後を追おうとするが荷車に着物の一部が挟まって中々起き上がれない。 落ち着いてやれば簡単に外れるのだが半ばパニック状態の青年にそれはマジ無理な相談だった。 「くっそ、マジぶっ殺す! マジ一匹残らずぶっ殺してやっからマジ覚えていろよ!」 雪の中後ろからする青年の憎悪の声を振り切り、落ち着いたところでれいむ達は休む事にした。 大量の食べ物は手に入ったがこのままこれを持っていても住処がない以上どうしようもない。 「おかーさん、このままじゃれいむ達ゆっくり死んじゃうよ!」 「そーだよ、だから死ぬ前にせめてゆっくりおなか一杯になって死にたいよ!」 子供たちに言われ母れいむは考えた。 ここで食料を食べ続けても雪がしのげない以上はいずれは死ぬ。 それも食料がある分ゆっくりと凍え死ぬだろう。 ゆっくりするのはいい事だがなるべくなら自分達も子供達も苦しまないであの世に行きたかった。 物を食べれば半端に体力が続いて苦しむことは母れいむには分かる。 「ゆっくり待ってね! この食べ物はあのやさしいおじいさんにゆっくり届けてあげよう!」 「ゆっ! おかーさんどうして?!」 「そーだよれいむ達どうせ死ぬならゆっくりお腹一杯食べて死にたいよ!」 「ゆっくり考えてね! ゆっくりいい事をすればてんごくに行けるんだよ! そうすればあの世で一杯ゆっくり出来るんだよ!」 「ゆっ、そうなの?!」 「じゃあみんあでいいことしてゆっくり天国にいこうね!」 「お帰りアンタ。 どうだい傘は売れたかい?」 「いや、それがのう…。」 雪の中家に着いた老人は妻の老婆にゆっくりの一家に傘をあげてしまった事を話した。 「すまないねばあさん。」 「何言ってんだい。 どうせ売れなかったら邪魔になるだけなんだからあたしゃ何にも言わないよ。 それにアンタがそれでいいと思ったんだからあたしも悪いなんて思わないさ。 何、年の瀬は贅沢出来なくても冬の間の買い置きは十分。 二人でゆっくり年越ししようじゃないか。」 子にも恵まれず寂しく年を越すよりはせめて贅沢にと二人で作った傘を売りに行った老人は、 それをゆっくりにあげてしまった事を咎められると思っていたが、老婆はその選択をやさしく受け入れてくれた。 自分にはこの妻がいれば幸せなのだと涙する老人に 「いやだよアンタ年甲斐もなく泣いちゃって。」 と笑う老婆。 そんな暖かな老夫婦の家の戸を叩く音があった。 「おや、誰だろうね、こんな雪の中…。」 老婆がいそいそと戸を開けるとそこには 『ゆっくりしていってね!』 「殺す!マジ殺す! マジ一匹残らず殺してやるかんな、あのマジクソ饅頭が!」 庄屋の番頭にこっぴどく叱られ、腹いせにあのゆっくり達に復讐してやろうと雪の森を歩く。 青年には心当たりがあった。 最近人里で食料が盗まれる事が多い。 現場の様子からして犯人はゆっくりで、住処の検討も着いているからそれを掃討しようという話を青年は知っていた。 話の内容から巣の位置もそれなりに見当がつく。 マジで理不尽な怒りを燃え滾らせる青年はズカズカと雪の振る森を歩いていった。 「む~しゃむ~しゃしあわせ~♪」 れいむから奪った巣の中ゲスまりさ一家は早速食料を食い漁っていた。 「それぐらいにしておくんだぜ! 沢山あるけどせつやくしなきゃまた誰かに取りにいかせなきゃならないんだぜ!」 「ゲラゲラ、あんなの簡単なんだぜ!まりさ達は無敵なんだz…ゆべっ!」 「マジ見つけたぞオラア!」 突然洞窟に青年が入り入り口近くのまりさを蹴り飛ばして壁に餡子をぶちまけた。 「ゆっ、おにいさんここはまりさ達の…ゆぶえ!」 続けて抗議しようとした二匹目を踏み潰す。 「マジるっせえよこのクソ饅頭が! マジテメエらだろ俺の荷物や里で食いモン盗んでたのはよぉ!」 「ゆっ、それは違うんだぜ! 盗んだのは全部れいむ達なんだぜ! まりさは盗んでないんだぜ、分かったらゆっくりあやまっておかしを…ゆぎぎぎ…ゆぎあ!」 更に弁解と謝罪の要求を始めたまりさをマジ二つに引き裂いた。 「はあ?マジ何言ってんのオマエ。 俺マジお前らが逃げてく所見ているんだけど? 帽子被っているのなんてマジお前らしかいねえだろうがよ! しかもマジ何よその食い物、マジ全部里のモンじゃねえか! わかったらマジ死ねやゴルア!!!!」 「ゆげええええ!!! なんでなんだぜえええええ!!!!!!」 雪はすっかり溶け、レティも姿を消した頃、百姓夫婦と共に農作業をするゆっくりれいむ一家の姿があった。 「おじいさん、これ何処におけばいいの?!」 「ああ、それはこっちに。 ああ、そこはもうそれぐらいでいいじゃろう、あっちにお茶菓子用意しておいたからゆっくり休みなさい。」 『ゆっくり了解したよ!』 「おじいさん達も一緒にゆっくりしようね!」 元々寂しかった老夫婦は雪の中恩返しに重たい食べ物を運んできてくれたれいむ一家を受け入れ、正月をにぎやかに過ごした。 れいむ一家はその後老夫婦の農作業を手伝いながらゆっくりと充実した日々を過ごしている。 運搬が得意で虐げられて来た為か根性とモラルが備わったれいむ一家は老人達にとっても孫のような存在になった。 老夫婦にとっても身の回りがにぎやかになり、寂しくはない。 「はるですよ~♪」 幻想郷の春は妖精リリーの能天気な呼び声で始まった。 このSSに感想を付ける
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俺が山で山菜を取っていると、ゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が近づいてきた。 「おじさんなにとってるの?」 「あぁ、これはさんs「あぁ、これおいしいたべものだ!!!」」 言うが早いか、俺の籠に迫り来る二匹、なす術もなく倒される俺。 「うめぇ、めちゃうめぇ」 「これ、なかなかとれないんだよね! おじさんまりさたちのためにとってくれてありがとう」 朝から苦労して取っていた山菜をどんどん食べられる。 こっちも苦労した身なので、唖然と居て座ったまま動けなかった。 「はぁ、おいしかった!!! おじさんありがとう! おかげでゆっくりできたよ!!!」 「また、まりさたちにごちそうしてね」 ゆっくりゆっくりと言いながら、二匹は山の中に消えていった。 『ゆっくりの住む山』 数分はそこに座り込んでいただろうか。 驚きが通り過ぎると、今度は怒りがこみあげてきた。 あれだけ苦労して取った山菜が、全てゆっくりどものエサになってしまったのだ。腹が立たない奴などいないだろう。 しかも、ご丁寧にまたよこせなどとほざいた日には、いたぶったあげくにずたずたに引き裂いてやりたいと思うのが人情だ……と思う。 ともかく、ぶち殺してやる事には変わりない。 座り込んでいてもどこの方向に逃げたかは分かっているんだ。俺は、慎重に二匹を追いかけた。 足音を立てない様、静かに二匹を追いかけると、ほどなく見つける事ができた。 ゆっくりゆっくり言ってどこにいるか合図を出している上、満腹のためか、極めて遅い速度で移動していたからである。 そのまま持ち上げて握り潰してやろうと思ったが、ふと別の事を思いついたため、そのまま二匹をつける。 しばらく追いかけていると、二匹は洞穴に入っていった。そこが奴らの住みかなのだろう。 同居しているとは好都合だ。無意識に、俺の口元が笑みの形を作る。 制裁の手段として考えている事をするためには、絶対に逃げられてはいけない。 辺りはかなり暗くなっているからもう眠っているだろうが、念のため入り口その他のすきまに石を詰め込み、絶対に出られなくしておく。 これからの事を考えながら、俺はニヤニヤしつつ家に戻った。 次の日、俺は昨日閉じ込めたゆっくり達の巣へと向かった。 奴らはまだ眠っていて「ゆ~、ゆぅ……」などと気色の悪い鳴き声をあげていた。 寝言のつもりだろうか。本当にふざけた饅頭どもである。 殴りつけたくなる衝動を抑え、静まり返って何も音が聞こえない巣の中を進むと、一番奥に食糧貯蔵庫らしき穴があった。 雑草や虫の死がい、花が大量に入っているその穴に、石を投げ込む。 ゆっくりどころか、人間にすら取り出せないほどびっしりと石が詰め込まれたのを確認してから、俺はその場を後にした。 無論、入り口その他のすきまに石を詰め込み直しておくのは忘れない。 そのまま入り口付近で待っていると、奴らが起きたらしく「ゆっくりおはよう!」などという声が聞こえた。 「ゆーゆーゆー♪ きょうのごはんはなんだろなー♪ ……ゆっ!? ゆっくりでれないよ!?」 「なにこれ! いしがいっぱいつまってるよ! なんでぇ!?」 「……ゆっ! ごはんもない! いししかないよぉぉぉ!!!」 「なにごれえええぇぇぇぇぇぇ!!!」 巣の中は大混乱に陥っているらしい。 俺は、もう二度と外に出られないゆっくりどもの悲鳴をしばらく楽しんでから、山菜を取りに行った。 ウドにアケビ、たらの芽にワラビ……この山は、食材の宝庫とも言える(注1)。 だからこそあのゆっくりどもはこの周辺に住み着いたのだろうが、奴らにはトリカブトやドクゼリやハシリドコロで十分だ(注2)。 しばらく探し続け、背負ったカゴが半分程度埋まった頃、あの忌々しい「ゆっくりゆっくり」の大合唱が聞こえてきた。 このままでは、昨日と同じ結果になりかねない。俺は、背を出来るだけ低くしてその場を去った。 帰る途中、ふと気になって閉じ込めたゆっくりどもの元へ行ってみる事にした。 念のためと、入り口を調べてみると、動いた形跡は全くない。 耳を近づけると「ゆっぐりおぞどにでられないよー!」「だれがだずげでー!」などと言う悲鳴が聞こえた。 ずっと叫び続けていたらしく、最初の時と比べてかなり声は小さくなっている。 狙い通りの結果になった。奴らは、このまま放置しておけば確実に餓死するだろう。 無駄に死体など見たいものではないし、ゆっくりなど食べる気にもならない俺にとっては、この方法が一番だ。 「だずげでえぇぇぇぇぇ!」 「ゆっぐりざぜでぇぇぇぇぇぇ!」 二匹が泣き叫んでいる。だが、奴らの仲間は助けに来られないだろう。周囲を見回って、絶対に出られなくなる様にと考えて閉じ込めたのだ。 こいつらの悲鳴を聞いていると、先ほどの大合唱でささくれ立った心が僅かに癒えた。 ゆっくりどもの助けを求める声を背に、俺は帰途についた。 無事に山菜を取って帰ってこられた後、鬱々とした感情が俺の心に淀んでいた。 山菜を食ったゆっくりどもへの仕置きは終ったが、それ以外にもたくさんのゆっくりどもがいる。 つまり、今この時も、ゆっくりごときに美味しい山菜が食われているのだ。 いや、ただ食うだけならどうにか許せるが、奴らは無計画に全てを食いきってしまうだろう。 ゆっくりのアンコ頭では、山菜がどれだけ貴重なものなのか、だからこそ一定以上の量は採ってはならないと教え込んだとしても、絶対に理解出来ないだろう(注3)。 俺の頭に、山菜も雑草も何もかもが食いつくされて荒涼とした山の風景が、映像として浮かび上がってきた。 そうなってからではもう遅い。俺は、ほぞを固めた。 ――あそこのゆっくりどもを全滅させる。一匹も残らずだ。 そうと決まれば、のんびりとなどしていられない。 俺は、急いで人間の里の有力者達の元へ走った。 ゆっくりは子供が思い切り殴っただけでも死ぬ程度の弱さだが、その分数が多い。 単純に駆除するだけなら道具を使う事で少数でも不可能ではないが、今回は山の環境にも注意せねばならないため、火や水は全く使えない。 つまり、一匹も残らず全滅させるためには、可能な限りの人員を集めなければならないという結論に到るワケである。 そのためには、有力者の手が絶対に必要だ。 何時間もかけて説得しただけの事はあり、人間の里の有力者のほとんど全員が集まってくれた。 中心となる部屋の入り口には『山のゆっくり駆除委員会』と書かれた立て札がかかっている。 俺が集めたためか、名だたる有力者を押しのけて視界進行役をおおせつかってしまった。 「本日は、お集まりいただいてありがとうございます」 まずは頭を下げる。大きくない部屋の中に拍手の音が鳴り響いた。 俺は、声が震えていないか気をつけながら、ゆっくりによって貴重な山菜が全滅しようとしている現状について訥々と説明した。 「……という事で、山のゆっくりどもから山菜を守りたく思い、今回お集まりいただきました」 「対策などがございましたら、皆様からのご意見を拝聴したく思います」 話が終わると同時に、ざわざわと相談がはじまり、静まり返った部屋が一気に雑然とする。 それを遮る様に、細く美しい腕が上がった。あれは、寺子屋の慧音様だ。 「皆様、お静かに。慧音様からご意見があるそうです。よろしくお願いします」 慧音様はうむと一つ頷いて、立ち上がった。 「今回の事を解決するには、私の能力が最も適していると考える」 「つまり、山の草木そのものの歴史を保護する事で、奴らを別の場所へ誘導する作戦だ」 「この場合、ゆっくりどもを皆殺しにする必要性はない」 「皆はどうやってゆっくりを殺そうか考えてる様だが、目的を履き違えてはならない」 「最優先すべきは山菜であり、ゆっくりを殺害する事ではないからだ」 「もちろん、この作戦ではかなりの人員を使う事になるが、それは皆も協力して欲しい」 以上だ、と締めくくり、慧音様は座った。 皆、目からうろこが落ちる思いで、慧音様をしばらく見つめていた。 この中の誰もが、どうやってゆっくりを皆殺しにするかという一点について考えていたというのに、慧音様は全く別の考えをお持ちだった。 その事に感銘を受けたのは、俺だけではないだろう。 事実、有力者も加工所職員も関係なく、皆が尊敬の眼差しを慧音様に注いでいる。 だが、慧音様は視線が恥かしいらしく、頬を赤く染めて咳払いをした。 「……えー、慧音様、ありがとうございました。他に、何か対策がある方はいらっしゃいますか?」 それでようやく立ち直った俺は、皆を見渡して意見がない事を確認した。 「ご意見がないようですので、慧音様の案を採用させていただきたく思います」 ありがとうございました、と頭を下げて、人員や具体的な方法について意見を出してもらう。 思っていたよりずっと早く作戦は決まった。これも、慧音様の案のおかげだろう。 数日後、ゆっくりの駆除作戦はつつがなく実行され、全てのゆっくりは山からどこかへと去っていった。 俺は、ゆっくりが消えた山の中で、以前の様にのんびりと山菜を採っている。 慧音様は凄い。今回の事件で、改めてそれを確認した。 だから、その情報を聞いた時、俺は激怒を通り越してあきれ返ってしまったほどだ。 『慧音様が追い出したゆっくりは、全てがとある研究施設の実験材料として使われている』 お優しい慧音様がそんな事をするはずもない。 いや、仮に一部を実験材料として提供したとしても、別に咎める事ではない。 少なくとも、あの山のゆっくりが害獣であるのは確かで、それを追い出したのは慧音様のおかげだからだ。 いずれにせよ、慧音様には一片の非もない。我々人間の里の者は、皆慧音様に感謝しなければならないだろう。 ――そうだ、山菜を持って行こう。慧音様も妙な噂でお心を痛めているだろうし、美味しい山菜を食べれば元気になられるはずだ。 慧音様の笑顔を想像しつつ、俺はうきうきした気分で山菜を採っていった。 「こんにちは、元気かな」 「あぁ、元気だよ。そっちは?」 「私も悪くない……どうだ、奴らは?」 「知らないな。見に行きたいものじゃないし」 「そうか。ところで妹紅」 「なんだ、慧音?」 「山の中で面白いものを見つけたんだ。ゆっくりなんだが、石みたく硬くて、本当に興味深いんだ。そこは歴史を隠したままにしてるから、誰も来ないんだ。それで……」 「わかった、ちょっと見に行こうか」 「……ああ、見に行こう!」 妹紅の手を笑顔で引く慧音。 その姿は、外見年齢相応の少女の様だった。 こちらのSSは、ゆっくり十八番~ノンフライ~氏の触媒をお借りしました。 お礼申し上げます。 もこけーねは正義。 by319 注1:ウド・アケビ・たらの芽・ワラビは食用の山菜で、人を選びますが、合う人は非常に好む味です。 注2:トリカブト・ドクゼリ・ハシリドコロは全て毒草です。絶対に食べてはいけません。 注3:山菜は自然に生えている草木なので、美味しいからと乱獲をしてしまうと、後々取れなくなる恐れがあります。資源を大切に。 このSSに感想を付ける
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※いじめ小ネタ545 ゆっくりボール の登場人物が出ます ※同上の数日後と思ってくれればうれしいです 「ゆっくり天井針」 まりさは歯を食いしばっていた。 少しずつ近づく死の恐怖に まりささまはこわくないのぜ・・・ まりささまはつよいのぜ? だからこわくないのぜ。 あんよさんやかれてもいたくもこわくもないのぜ。 いたいいたいがとんでいったらじじいをやっつけてれいむのかたきをとるのぜ。 がまんすればいいのぜ。 まりささまはさいきょうなのぜ。 でもさいごにえいえんにゆっくりしちゃったれいむにいいたいのぜ。 さいごまで・・・ ゆっくりしたかったのぜ。 まりさは復讐という炎に燃えていた。 愛する番のれいむが殺されてしまったこと。 れいむを殺したじじいを永遠にゆっくりさせてやる。 まりさは自信満々に家へ向かったがあっさりと捕まってしまった。 復讐をしようと思わなければこんなことにはならなかったかもしれない。 それは過去にさかのぼる。 その日は突然訪れた。 ある日の山道でぱちゅりーが前回殺されたれいむを発見した。 ぱちゅりーが何事だと思いれいむを見ると 激しい打撲傷、凹んだ皮を数十ヶ所確認した。 これは明らかに自然にできるものではない。 おそらく人間にやられたのだろうと考えた。 「むきゅ!たいへんだわ!!はやくおさにしらせないと!!」 と病弱の体で必死にぱちゅりーはれいむを運んでいった。 場所変わってまりさが治める里。 「たいへんよーおさー!!」 「どうしたのぱちゅり・・・ ぱちゅりー!どうしたのそのれいむ!」 「みちにたおれていたわ!たくさんやられたあとが!!」 「これは・・・!」 「にんげんさんにやられたかもしれないわ!」 「ぱちゅりー、みんなをあつめてね! かいぎをするよ!」 「ゆっくりりかいしたわ!」 数分後ゆっくりみんなが集まる。 「みんな!よくきいてね! さっきぱちゅリーがぼこぼこにされたれいむをみつけたよ!」 という声と共にぱちゅりーがれいむの死体を連れてくる。 ゆわあああという悲鳴が聞こえ始める。 すると奥から 「れ・・・れいむぅーッ!!」 と一匹のまりさが飛び出してきた。 「つがいなの?」と長がたずねてきた。 「ゆ・・・そうだよ!あとだれがこんなことをしたのおおおお!?」 「むきゅー、きっとにんげんさんよ。」 「にんげんさん!?」 「むきゅ、そうよにんげんさんはとてもゆっくりできなくてゆっくりをいじめてたのしむいきものらしいわ。 さらにはみつけたおやさいさんをゆっくりからうばいとるなんていうはなしもきいたわ。」 「ゆ!?そうなの!?」 「ええ・・・でもにんげんさんはわたしたちよりつよいってきいたわ。」 「ゆ!にんげんさんはゆるせないね!まりさがせいさいをくわえてあげるよ!ぱちゅりー!!そのにんげんさんのおうちはどこ!?」 「むきゅ、やまをおりてすぐよ。」 「わかったよ!じゃあ、いってくるね!」 まりさが忙しそうに行こうとする。 「むちゃよ、まりさ!あなたじゃ・・」 「だいじょうぶだよぱちゅりー!かならずしゅきゅうをあげてもどってくるからね!」」 「まりs・・・」 ぱちゅりーが急ごうとすると、長が止めた。 「もうむだだよ、ぱちゅりー。 あのまりさ、つがいのことになるとまわりがほとんどみえなくなるせいかくなの。 まりさにはしょうがないけど・・・。」 「むきゅ・・・」 そして下り道。 武器である木の枝を持ってお兄さんの家へ向かう。 (これでかてるよ・・・) まりさは自信満々だった。 この間、群れを襲ったれみりゃに対し、ちぇんやみょんなどは木の枝を持って立ち向かった。 だからまりさも2匹みたいになれるはずだ。 そして、ついに人間のおうちを見つけた。 畑まであって、かなり広い。 (そうだ、ここのおうちのにんげんさんをやっつけたらここのおうちをまりさたちのものにしてここにむれをひっこさせよう!) なんておろかなことを考えるまりさ。 とりあえず挑戦状というものを申し付ける。 「にんげんさん!!ゆっくりでてきてね!!!」 と大声で叫ぶと一人の人間が眠たげな顔でゆっくりと出てきた。 「んだようるせーな。今日は土曜だぞ。ゆっくりさせろよ・・・まったく」 と扉を閉めようとするお兄さんまりさには気づいていない様子。 「ゆっくりむししないでね!」 「あー、なんだゆっくりか。お前らの相手をしてる暇はない。さっさと散れ。」 「いやだよ!れいむのかたきをとるまでは!」 「はぁ?(こいつまさか あのれいむの番?)」 「しょーぶだよ!」 「・・・勝てると思ってんの?」 「ゆん!もちろんだよ!」 「じゃあ、 よっと」 と蹴り飛ばす。 「ゆ゛っ!」 とあっさりと気絶。 やっぱゆっくりはゆっくりだ。 お兄さんはまりさを掴み家に向かう。 そうだ、こいつにはれいむと同じような恐怖を味わってもらうか。 そして地下室。 まりさは目を覚ました。 まりさは見たこともない場所に立っていた。 「ゆ・・・ここどこ?」 「おう、起きたか。」 「ゆ!ここどこ!?」 するとお兄さんが上を指差し 「まぁ、まずは上をみな。」 まりさが上を見るとそこには鋭く光る針があった。 「なんなのあれええええええええええええええええええええええええ!?」 「まぁあと数分したら串刺しだな。 どこに逃げても無駄だし。」 とお兄さんはさらりといった。 「やだああああああああああああ!しにたくないいいいいいいいいいいいいいいいい!!」 針はじわりじわりと近づいてくる。 この針はどこかの城のからくりと同じように作られている。 しかしこのからくりはだいぶ前に作られたものなので作り方はわからない。 ついでに出し方は取扱説明書によると外から出ないと出せないと書いてある。 俺はスイッチを押して針を止め、懐から3つのカードを出し、まりさに話しかける。 「まりさ、貴様に選択権を与えてやる。 このカードのうち好きなものを選べ、なお選ばなかったら即殺ね。」 「ゆ゛ じ・・・じゃあ、このカードさんをえらぶよ・・・」 まりさは真ん中のカードを選ぶ。 「このカードは・・・」 じゃーんと言う効果音とともにカードがを開く。 「足焼きの刑でーす♪」 「もっとやだああああああああああああああ!!」 お兄さんはライターを取り出すとまりさをひょいと拾い上げて。ライターで足を焼いた。 「あづいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」 まりさの足を封印し、元いた位置に戻す。 そしてスイッチを入れる。 針はまた動き出す。 「やだああああああああああああ!!やだあああああああああああああ!!しにたくないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「五月蝿い。」 スイッチの隣にあったレバーを倒す。 すると針が下りてくるスピードが上がる。 「ゆゆゆっ!」 「数分どころか残り何秒ぐらいかになっちまったぞ。」 「ゆ゛!」 「お休みー♪」 「やだあああああああああああああああ!!」 そして現在。 針とまりさの距離が一センチに縮まる。 そしてまりさに針が刺さる。 「ゆぐうっ!!」 「ほらほらーどうしたーもうすぐ中枢餡に刺さるぞ」 お兄さんの言う通り針はぐいぐいとまりさに食い込んでいる。 目がかすんできたここまでなのか。 するとれいむといたころの記憶が頭によぎる。 『れいむねっ!・・・まりさと一緒にゆっくりしたいんだけど・・・いいかな・・・?』 とプロポーズをしてきたれいむ。 『みて!みて!まりさー!ゆっくりしたあかちゃんができたよ!!』 大きくなったお腹を見せつけにんっしんっ!をした証を見せるれいむ。 『ゆゆゆ~♪ あかちゃ~ん♪ ゆっくりうまれてね~♪』 と赤ちゃんに上手な歌を歌うれいむ。 『ゆっくりうまれるよぉぉぉぉぉぉぉ!! ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』 赤ちゃんを必死になって産むれいむ。 『まりさににたゆっくりしたあかちゃんだね! いっしょにあそぼうね』 と子と一緒に遊ぶれいむ。 『おちびちゃんもおおきくなったからひとりでかりができるようにおしえないと!』 と狩りの仕方をおしえるれいむ。 『ゆうう~!やめてええええええええええええええええええ!!』 とれみりゃから必死に子供をかばうれいむ。 しかし、こどもの大半はれみりゃに餡子を吸われ、死んでしまった。 『ゆっ・・・ゆっ・・・ おちびちゃんがいないいまどうすればいいの? まりさだけじゃゆっくりできないよおおおおおおおおお!』 とわがままを言うれいむ。 しかし、当時は返事はできなかった、だが今ならできる。 「また・・・こどもをつくればいいのぜ・・・」 と。しかし・・・ 「・・・は?」 という返事がしただけだった。 そう、それは過去の話。 れいむは当にこの世にいないのだ。 「だかられいむ・・・ゆっくりするのぜ・・・」 するとお兄さんは「ははぁ~ん」とつぶやき。 「さてはこいつれいむの事を思い出してるみたいだな・・・」 だが針は容赦なく降りてくる。 「だけど・・・」 そしてまりさの断末魔が響く 「時は過ぎていくものなんだよ。ゆっくり理解してね」 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああれいむうううううううううううううううううううううううううう!!!」 という叫び声とともにまりさが倒れる。 息をしなかったため、恐らくついに中枢餡にたどり着いたのだろう。 そのまりさの遺体を見てお兄さんはつぶやいた。 「時って・・・残酷だな・・・」 あとがき ゆっくりボールの続編でした。 続編って何かとムズい byさすらいの名無し 過去作品 いじめ系2850 ゆっくり油火踊り祭 いじめ系2889 ゆっくりべんじゃー いじめ系2932 すぃー吶喊 いじめ系2938 ゆっくりが実る木 いじめ小ネタ542 ゆっくりジェットコースター いじめ小ネタ545 ゆっくりボール いじめ小ネタ546 ゆっくり太郎 いじめ小ネタ553 ゆっくりできない川さん いじめ小ネタ562 ゆっくり草野球 いじめ小ネタ567 ゆっくり瞬殺されるよ! いじめ小ネタ573 金バッチがほしいよ! このSSに感想をつける
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ゆっくり鉄の掟 1.ゆっくりできないゆっくりは、ころす。 2.ぐずなゆっくりは、ころす。 3.じぶんだけゆっくりするゆっくりは、ころす。 4.みにくいゆっくりは、ころす。 5.びょうきのゆっくりは、ころす。 6.すっきりがへたなゆっくりは、ころす。 7.いなかものなゆっくりは、ころす。 8.にんげんにこびるゆっくりは、ころす。 9.かざりのないゆっくりは、ころす。 10.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 11.ゆっくりのかざりをうばうゆっくりは、ころす。 12.こどもをゆっくりさせないおやゆっくりは、ころす。 13.みんなをゆっくりさせないドスまりさは、ころす。 14.おやきょうだいでも、ゆっくりするためなら、ころす。 元ネタはゲルショッカーの掟 カッとなってやった、特に反省はしていない。 何という内ゲバ、とか ここが矛盾してるだろ、とか 大事なことなので2回言いました、等は全て仕様です。だってゆっくりだし。
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※現代社会に当然のようにゆっくりがいます。 ※オリ設定満載です。 ※ぬる虐めです。そして割と愛で気味です。 ※fuku2278?の続きですが、読まなくても問題はありません。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そしてまりさはそんな不思議に満ちた生命体そのものだけど、自分たちが不思議だとは思ったことが無い。 「ゆっへっへ・・・まりさはこのもりでいちばんゆっくりはやくはしれるんだぜ!」 さっき、かけっこで今まで一度も勝ったことの無かったゆっくりちぇんに勝った。 ちぇんは凄く巧みに尻尾を使うから普通のまりさ達の3倍以上の速さで走ることができる。 でも、まりさはそのちぇんに勝った。ゆっくり頑張ったおかげでまりさはこの森でいちばん速いゆっくりになった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「すごいよまりさ!ちぇんにかっちゃったよ!」 そういってまりさを褒め称えるのはこの森でいちばん可愛いれいむ。まりさの恋人だぜ。 「ゆゆっ!でもまりさはもっとうえをめざすんだぜ!」 「ゆぅ?でも、まりさよりはやいこなんてこのもりにはいないよ?」 「だからにんげんとしょうぶするんだぜ!」 「ゆゆっ!?まりさ、にんげんはこわいよ!!」 「ゆっ!だいじょうぶだぜ!にんげんがまりさのあしにかなうわけがないんだぜ?」 まりさを必死に引きとめようととするれいむ。可愛いやつだぜ。 でも、今のまりさは誰にも止められないんだぜ? 「でも、でもぉ・・・」 「れいむ、まりさをしんじてほしいんだぜ!」 そういって半ば強引にれいむにちゅっちゅして口を塞ぐ。 「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅう・・・」 すると、れいむは恥ずかしさで顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。 「れいむ、かえってきたら・・・いっしょにすっきりしようぜ!」 「まりさ・・・!うん、れいむゆっくりまってるよ!」 それからまりさは2日ほどかけて、人間の町に到着した。 「ゆ!ここがにんげんのまちなんだね!」 まりさがきょろきょろと町の様子を見ていると、後ろからいきなり話しかけられた。 「ねえ、そこのゆっくりまりさ。こんな朝早くに何してるんだ?」 「れいむたちもこんなあさはやくだよ〜!」 「ゆっくりはやおき〜!」 「「「「「「ゆっきゅり〜!」」」」」」 「・・・あんたらは黙ってなさい。ねえ、あんた、飼われ?それとも野良?」 「ゆ!まりさはまりさだよ!」 振り返ると、猫車(と言うらしい)にたくさんのゆっくりを乗せて、服の中にも2匹のゆっくりを隠している変なおねーさんが立っていた。 「いや、そんなトートロジーはいいから。じゃあ、どこから来たんだ?」 「まりさはもりからきたんだよ!それでね、いままちについたの!」 おねーさんはいつの間にかまりさの目の前にしゃがみこんでいた。 胸が邪魔で表情は良く見えないけど、酷いことをする人間ではなさそうだ。 「ふーん。で、何しに来たんだ?」 「ゆ?ゆゆっ!そうだ、おねーさん!」 「んあ?」 「まりさとかけっこでしょうぶしてね!」 「・・・なんで?」 おねーさんは首をかしげている。けれど猫車に乗っているゆっくり達は事情を察してくれた。 「ゆ!まりさはすごくはやいんだね!」 「ゆっくりはやいゆっくりなんだね!」 「・・・何のこっちゃ」 それでもやっぱりおねーさんは事情を飲み込めない。仕方ないからまりさがゆっくり説明してあげることにした。 「まりさはね!もりでいちばんはやいゆっくりなんだよ!」 「・・・ゆっくりにとって速いのは名誉なのか?」 「ゆん!そんなことどーでもいいんだよ!」 おねーさんがいちいち話の腰を折るからほほを膨らませつつ注意してあげた。 「ああ、ごめんごめん。で、その速いまりさが何しに町に来たんだ?」 「にんげんとしょうぶしにきたんだよ!」 「そうかそうか、勝負か、それは良かった、きっとどこかの気前のいい愛好家が日が暮れるまで付き合ってくれるよ。 そんな訳であと3時間もしたら大学で忙しく寝なければならない私はとっととどこかに消えるわ、それじゃさよなら」 首をかしげるのを止めたおねーさんはまくしたてるそれだけ言い切ると猫車を押して歩いていこうとする。 「ゆ!ゆっくりまってね!!」 立ち去ろうとするおねーさんをまりさは必死で追いかける。けど、おねーさんは速すぎてぜんぜん追いつけない。 どんなに急いで跳ねてもどんどんおねーさんとの距離は広がっていく。 「おねーさん、はやいよ〜」 「すぃ〜」 「「「「「「ゆっきゅりー!」」」」」」 そして、猫車に乗っているゆっくり一家もそれが当然と言った様子で楽しそうにしている。 まりさは一心不乱におねーさんを追いかける。途中、どこからかカーンカーンと甲高い音が聞こえてきたけど、気にせずまりさは跳ね続けた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 疲れたから少し休んで呼吸を整える。足を止めておねーさんの方を見てみるとさっきより少しだけ距離が縮まっていた。 「ゆっ!まりさがんばるよ!」 まりさが少しずつ距離をつめていく間もおねーさんは黄色と黒色の縞々の棒の前でじっとしている。 「ゆっ!・・・ゆっ!・・・ゆっ!・・・ゆっ!・・・ゆっ!」 あと3歩・・・あと2歩・・・あと1歩・・・追いついた! そして、まりさがおねーさんを追い抜こうとしたとき、頭上からチョップが飛んできた。 「ゆぎぃ!?」 「待て待て待て待てっ」 チョップを仕掛けてきたのはおねーさん。きっとまりさに抜かれるのが悔しくて邪魔したんだろう。 でも、それはルール違反だから、おねーさんにゆっくり注意してあげようとしたとき・・・ ものすごい速さで、信じられないほど大きな緑色の何かがまりさの目の前を通り過ぎた。 「な、なな、なななななな・・・なにあれえええええええええええ!!?」 「あれはね、でんしゃだよ〜♪」 まりさの質問に答えてくれたのは猫車の上のれいむ。 「おねーさんがとめてくれなかったらゆっくりしんでたん・・・!」 猫車の上のまりさが喋っている最中に、またものすごく大きな何かがまりさの前を通り過ぎた それは白色で、さっきのよりもずっと速かった。 「ゆぎゅうううううううううううううう!!?」 そのでたらめな速さを目の当たりにしたまりさは何だか気持ち悪くなってきた。 エレエレエレエレエレエレエレ・・・・・・ そして、気がついたらあんこを吐き出していた。 「うおっ、こいつ餡子はいてるぞ?」 「だいじょうぶだよ!そのこはゆっくりできないものをみてきぶんがわるくなっただけだよ!」 さっきのゆっくり一家とおねーさんの声だろうか?どこか遠くの方から声が聞こえてくる。 「でも、アンタらは大丈夫だよね?」 「れいむたちはなれっこだからだよ!」 「ああ、なるほど。・・・で、こいつどうしよう?」 「おねーさん、ゆっくりたすけてあげてね!」 「やだ!」 「「どぼぢでぞんなごどいうのおおおおおお!!」」 「「「「「「ゆーっ!!」」」」」」 「・・・・・・はぁ、わかったよ。でも、飼ってやるつもりは微塵も無いからな?」 「「ありがとう、おねーさん!」」 「「「「「「ゆっきゅりー!」」」」」」 目を覚ますと、見慣れない場所にいた。辺りを見回すとさっきのゆっくり一家とおねーさんがまりさを囲んでいる。 「・・・・・・ゆう〜?」 何があったんだっけ?よく思い出せないなぁ・・・。 「お〜い、何ぼけっとしてるんだ?」 そういって心配そうにまりさの顔を覗き込んだおねーさんは目の前で手のひらを思いっきり左右に振った。 「ゆぎぃいいいいいいいいい!?」 エレエレエレエレエレエレエレエレ・・・ また、意識が遠のいた。 「またかよ・・・」 「おねーさん!なにやってるの!?」 「何って、無事を確認しようと・・・」 「そんなゆっくりしていないてをみせられたらゆっくりできないよ!」 「アンタら・・・本当に難儀な生き物だね」 「「「「「「ゆーっ!」」」」」」 「あとでゆっくりあやまってね!」 「はいはい、わかったよ。それより、そろそろご飯食べないか?」 「ゆっ!おねーさん、はなしをそらさないでね!れいむはたくあんがたべたいよ!」 「文句言うか、素直に話を逸らすかどっちかにしろ」 「まりさはさけかすがほしいよ!」 「「「「「「ゆっきゅりー!」」」」」」 そこでまりさの意識は途絶えた。 「清く正しく」 「きめぇ丸です」 何度目になるかわからないけど、またまた目を覚ますとまりさの周りを2匹のきめえ丸と呼ばれるゆっくりがぐるぐる回っていた。 エレエレエレエレエレ・・・ また、意識が遠のいていく。 「あなたもゆっくり飼っていらっしゃるなんて意外だわ」 「んー、まあちょっとした成り行きで」 「でも、ゆっくりは飼い主に似ると言う言葉通り、貴女の胸同様締りの無い面構えですわ」 「あー、はいはい、そうだねぇ」 「人の話を聞き流さないで下さらないかしら?」 「おねーさん、まりさがきめぇまるにいじめられてるよ」 「苛めは良くないなぁ・・・で、ゆっくりと飼い主がなんだっけ?」 「・・・な、なんでもありませんわッ!?」 おねーさんのお友達はちょっと高飛車な感じだな、と思った。 そして、またまた意識を失った。 またまたまたまた目を覚ますと今度は知らないおにーさんが目の前にいて、おもむろに手を左右に振り始めた。 エレエレエレエレ・・・ もう何度目だろうか。またまたまたまた意識が遠のいていく。 「なるほど・・・これは非ゆっくり過敏症だね」 「何すか、それ?」 「文字通り、ゆっくりしていないものを見ると気絶するゆっくりの性質が過剰に出てしまう症状だよ」 「で、それに何か不都合でも?」 「さっきの俺の手の動きがゆっくりしていないように見えたかい?」 「いや、遅すぎるくらいだったような・・・」 「そう、さっきのは時速3km程度。でも、この子にとっては自分より速いから非ゆっくりなんだよ」 「へぇ・・・でも、今朝は私が歩いているのを見ても平気でしたよ?」 「話を聞く限りだと・・・自分より圧倒的に速いものを立て続けに目の当たりにしたことで自尊心を打ち砕かれたのが原因だろうね」 「ふぅん・・・無力と貧弱を体現したような饅頭の癖に難儀なやつ・・・」 「おねーさん、このこかわいそうだよ!なんとかしてあげてね!」 「で、どうすれば治るんです?」 「人間のそばにいて定期的にカウンセリングを受けさせるしかないね」 「えーっと・・・先生!私からの気持ちです、受け取ってください!」 「いらん」 「ゆぅ・・・おねーさぁん・・・・・・」 「・・・はぁ、はいはい。わかったよ・・・」 こうしてまりさのゆっくり出来ない人里生活が始まった。 −−−あとがき−−− 雪辱は晴らすものではありません。 何と言うかね、ひたすらゆっくり出来ないものを見たまりさがエレエレするだけ。 斬新というか横着以外の何者でもない。これは酷い。 オリキャラは叩かれ易いという話がチル裏であったけど、オリキャラ(というか固有名詞持ち)って便利なんだよなぁ・・・。 (東方キャラで良いじゃないかって人もいるが、東方キャラだとそのキャラのイメージを変に気にするから書きづらくなる) スゥさんちのメアリーが色々アレでナニだけど、名前があると文章を書くときに色々便利だし。 特に自分みたいにキャラを使いまわす人はつけれるものなら名前をつけたいんじゃなかろうか? そんな訳でおねーさんの名前を考えていたら、思いついた名前が戸須磨 理沙(どすま りさ)。 だめだこりゃ。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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「ゆっくりありがとう!」 「これはおれいだよ!ゆっくりもっていってね!」 「またゆっくりしようね!うーぱっく!」 「うー!うー!」 赤みが混じり始めた陽の光が照らす湖畔の草原、そこからダンボール状の物体が上昇していく。 よく目を凝らせばダンボールが飛び立った場所に妙な装飾を施された饅頭が転がっているのが分かる。 ゆっくりれいむやゆっくりまりさ、ゆっくりみょんがうーぱっくにここまで運んで貰ったのだ。 にこやかな顔でうーぱっくからおりてきたゆっくり達は、スリリングな空の旅のお礼として相場よりも多目の果物をうーぱっくの中に残していた。 「うー!?うー!!うー!!」 「たのしかったからいいんだみょん!」 「ゆっくりもっていってね!」 「うー!」 予想以上の報酬を得たうーぱっくは満面の笑顔で湖の彼方へと飛び去っていく。 ゆっくり達はしばしの間、湖のほうを向いてうーぱっくを見送り、ゆっくりの貧弱な視力で追えなくなってから仲間の方へ互いに向き合った。 「もうおそいからゆっくりかえろうね!」 「そうだね!」 「ゆっくりたのしかったね!」 「むこうのどすはりっぱだったみょん!」 「まりさたちもあんなりーだーがほしいね!」 「ねー!」 一月に一回、会うことができれば良いといえるほど離れた場所に住む群れへと行ってきたゆっくり達は、次はいつ会えるかどうか分からない同種と思い切りゆっくりしてきたことを思い出して興奮していた。 そんな状態のゆっくり達は移動するには過剰なほど飛び跳ねながら森の奥へと消えていった。 家族や友人、仲間の待つ巣で長旅の疲れを癒し、「どす」から貰ったお土産を披露するのだろう。 そんな幸せそうに去るゆっくり達を見つめる瞳が茂みの中にふたつ。 ゆっくり達の姿が消えて暫くすると、そこの茂みがガサリと揺れた。 お約束のパターンで出てきたのは──「ゆっくりしていってね!」──ゆっくりまりさだった。 誰に宛てたか分からない独り言のような挨拶を放つという奇怪な芸当を見せたまりさは、先ほどの同種たちが消えた先を暫く見つめ、続いて湖の彼方に顔を向ける。 うーぱっくが飛び去った方向、当然だが明るい茶色の箱はとっくの昔に視認できなくなっている。 それでもまりさは湖の向こうを見続けた。 突然、まりさ以外のゆっくりが存在しない草原に妙な音が響き渡る。 まりさはおなかを空かせていた。 今日の狩に失敗したまりさは朝から何も食べていないから当然だ。 なるべくエネルギー消費を減らすため、茂みの中でゆっくりと昼寝をしていたまりさは、がやがやと騒がしい同種の声を聞き、食べ物を分けてもらえないだろうかと起きた。 しかし、まりさ種にしては引っ込み思案気味な彼女は結局巣に帰る仲間を見送るだけで動けなかった。 「ゆっくりながめたけっかがこれだよ!」といったところだろうか。 空腹のためにぼんやりとした表情で暫く黄昏ていたまりさ。 そのまま永遠にゆっくりするのかという勢いであったが、太陽が西の山の頂と重なり始めたとき、急に伸び上がり、次いで大声を上げた。 「そうだ!まりさもゆっくりをはこべばたべものがもらえるよ!」 祖先に多くのぱちゅりー種を持つ彼女はまりさ種の平均よりも身体能力が低めの代償として、まりさ種ではあり得ないほどの(一部のぱちゅりー種すら凌駕する)知性を持っていた。 その知性がまりさに自身の能力を生かして食料を得る方法をもたらしたのだ。 まりさは「水上を移動できるというまりさ種の能力でゆっくりを運び、報酬を貰う」という事を思いついたのだった。 思わぬ思い付きにはしゃぎ回ったまりさはもうすぐ日が落ちることにハッと気づき、慌てて巣へと帰っていった。 それから、まりさの困難と挑戦の日々が始まった。 自身の帽子には当然ながら自身しか乗れない。 自身が乗らなければ他のゆっくりを運ぶことなど不可能。 ゆえに、他のゆっくりを乗せるためのイカダが必要だった。 まりさが所属する群れのリーダーである通常サイズのゆっくりはまりさに協力してくれたが、それでもイカダの開発は困難を伴う物だった。 最初に提案されたのは板切れを利用する方法だった。 ゆっくりですら木が水に浮くことは知っていたからだ。 幸いにもリーダーの巣に補強財として人里のゴミ捨て場から調達された板切れが置いてあった為、それを流用することとなった。 結果から言うと散々な物だった。 チビゆっくりや子ゆっくりが乗る分には何の問題も無かったが、親ゆっくりが飛び乗った瞬間、当然というべきか板切れは思い切りひっくり返り、ゆっくりれいむの一家は哀れ水底へとまっしぐらに沈んでいったのだった。 この「不幸な事故」に、群れのゆっくり達は1日中泣き通した。 次に提案されたのはもう少し上等な方法で、オオオニバスの葉に乗るというものだった。 その葉を小さい頃に飛び石として池を渡ったことがあるゆっくりが提案した方法だ。 成体でも乗れるかどうか確かめるため、ゆっくりの群れはガヤガヤと騒ぎながらオオオニバスの群生地へと移動した。 結果は前回よりはマシなだけだった。 目の前でゆっくりれいむが急速に沈むのを見ていたゆっくりみょんは、そろりそろりと慎重に葉の上へと体を移した。 ゆっくりみょんが完全に葉の上に乗った瞬間には歓声があがった。 暫くはそうやって騒いでいたのだが、皆あることに気がつき始めた。 ──どうやってみずうみまでもっていくんだろう…? 何とか移動させようと5匹のまりさが帽子に乗った状態で葉を引っ張ったり押したりしたが、ある程度は動くものの、ある程度以上には何かに引っ張られて動かないという事が分かっただけだった。 水面より上ではどこにも繋がってない様に見える以上、水中で繋がっているというのはゆっくりでも分かる。 問題は水中に潜れないゆっくりがどうやって切り離すかということだった。 結局、どうしようもないという事になってこの案は廃された。 3つ目に提案された「死んだゆっくりまりさの帽子を使う」というのはハナからダメだった。 まりさ種を殺して帽子を奪うなど論外であったし、寿命などで普通に死んだまりさの物にしても家族が許さないからだ。 「イカダ」の件が解決を見ないまま1週間が過ぎ、餡子脳の限界をゆっくりと感じ始めた頃に一つの光明がもたらされた。 何か使える物はないかと足しげく人里のゴミ捨て場に通ったまりさの努力は報われた。 ゆっくりがこんな所で何を探しているのだろうかという人間の視線を背に受けたまりさが発見した物体。 「これならのれそうだよ!」 「ゆっくりもっていこうね!」 それは薄汚れた白い箱、大きさの割にやたらと軽く、ゆっくりまりさでも運べそうな程だ。 3つ以上の数を数えられないゆっくりの感覚で、大量に捨てられていたそれを早速運び出す。 4匹で来ていたまりさ達は、その物体に都合よく取り付けられていた紐を加えて引きずる様に持ち去っていった。 その様子を偶然眺めていた人間は、妙なことをするゆっくりだ、と疑問を覚えたがしかし、いらない物を持っていくのに文句など無くすぐにその事を忘れた。 その白い箱は偶然に外界から入ってきた発泡スチロールの箱だった、まりさが知る由も無かったが。 通常サイズの成体ゆっくりがぎゅう詰めで8体も乗れる(2x4で長方形に乗る)その白い箱。 それを利用したゆっくりまりさによる水上輸送は直ちに開始された。 初期こそ速達性と利便性で勝るうーぱっくの輸送よりも不便だと見られていたが、一度に大量のゆっくりを運ぶことができると知られてからは、湖の対岸同士や湖の中に浮かぶ小島への輸送に大活躍し始めた。 何せまりさが箱を1つ引っ張ると、うーぱっく4匹と同じだけ運べるのだ。 家族毎や群れ毎といった移動手段として重宝された。 運ぶ量が多いために報酬の野菜や果物、木の実といった食べ物を大量に獲得でき、まりさたちの群れはこの世の春を謳歌していた。 まりさがこの水上輸送を思いついてから1月が経った頃には、箱を前から引っ張ってゆっくりと岸を離れるまりさや、逆に後ろから引っ張ってゆっくりと減速しつつ岸へ近づくまりさを、湖のあちこちで見ることができるようになっていた。 それだけ目立つ状況こそが不運を呼んだ、後にそう語られている。 湖の近くに住む妖精の間で一時期流行っていた遊びがある。 ゆっくりを湖へ放り投げて飛距離を競うという物である。 気まぐれな妖精の間にあって比較的長続きした方に入るのだが、それでも何時しか誰もやらなくなっていたその遊び。 まったく珍しい事に、それが最近また流行り始めたのである。 形こそ少々変わっていたが、紛れも無くゆっくりを投げるあの遊びであった。 飛距離は重要であるものの競う対象とはならなくなった点を、少々と表現するかは人それぞれだが。 「ようせいだああぁーーー!」 「みんな!ゆっくりすばやくのってね!すぐにしゅっぱつするよ!」 森のほうを見ていたゆっくりれいむが悲鳴のような声を上げた直後、船着場となっている岸に集まったゆっくり達の動きが慌しくなる。 乗船客のゆっくりは慌てて白い箱に乗り込みだす。 「おさないでね!ゆっくりしてね!」 「ここはもうのれないよ!べつのにのってね!」 「れいむものせてね!ゆっくりさせてね!」 「なんて゛のせ゛て゛く゛れないの゛おお゛ぉ゛ぉ゛!!??」 あちこちでゆっくりの叫び声があがり始めた。 混乱気味なほど慌てた1匹のれいむが箱に乗り込もうと思い切り飛び上がったときに悲劇は起きた。 れいむが着地点を見極めきれず、箱の縁に直撃した結果、箱がぶおんとひっくり返ったのだ、既に乗っていたぱちゅりー種ごと。 いつぞやもあった様な光景だが、半月以上前の出来事などゆっくりの餡子脳では教訓にはできる訳が無かった。 2匹のゆっくりが水中に叩き込まれ、衝撃でバラバラになりつつ溶け出したが、周りの慌しさはそんな不幸な出来事すら気にせず進行していく。 白い箱の後ろにゆっくりまりさが2匹付き、思い切り押していく。 加速を少しでも良くしようという涙ぐましい努力だ。 結局、幸いというべきか先ほどの2匹の被害だけで残り39匹となったゆっくり達は出発できた。 出発できたからといっても、これで不幸が終わったわけではなかったが。 先ほどまでゆっくりでごった返していた岸辺には白い山が出来ていた。 妖精たちがどこかで捕獲し、持ってきたゆっくりを氷精が凍結したのだ。 「ざっとこんなもんよ!」 「チルノちゃん、ありがとう!」 「お疲れ様、チルノちゃん。」 ゆっくり十数匹を高速で凍結したチルノに、緑髪の妖精や他の妖精たちが声を掛ける。 彼女の冷気を操る程度の能力は大活躍だ。 妖精たちや特に仲の良い大妖精から言葉を掛けてもらうチルノは満更でもない様子だ。 チルノは賞賛を浴び、気分が良くなったところでゆっくりの山から凍結したゆっくりを引っ張り出す。 「アタイから投げるよ!」 「チルノちゃん!頑張ってね!」 「いきなり当てないでね!」 ゆっくりを凍結させた対価として初めに投げる権利を得たチルノは、カチコチのゆっくりれいむを持って振りかぶる。 必死の様子で遠ざかっていく水上のゆっくりまりさに狙いを付け、全力で放つ! 「ゆう゛う゛ぅっ!き゛た゛よお゛ぉっ!!」 「はやくすすんでね!はやくすすんでね!」 「ゆっく゛りし゛ないて゛ええぇぇぇ!」 箱に乗っているゆっくりが高速で飛来する白い塊を見て悲鳴を上げた。 一方狙われている事をここ数日の経験から分かっているまりさ達は、何とか移動速度を上げようと四苦八苦する。 ゆっくりれいむは白く輝く氷の結晶を彗星の尾のように残しながら湖上を飛翔、ゆっくりが乗せられた箱を必死に押しているゆっくりまりさ、その後方に着水した。 人間の子供の背丈ほどの高さがある水柱が轟音を上げてそそり立つ。 「あーっ、外れたぁ!」 餡子が欠片も混じっていないきれいな水の柱を見たチルノは、自分の投てきが外れたことを知って悔しがる。 「次は絶対当ててやるんだから!」 「次は私だね!」 チルノは大妖精に慰められながら下がり、凍ったゆっくりちぇんを持った別の妖精が出てきた。 「また゛き゛た゛よ゛お゛お゛おぉぉっ!?」 「は゛やく゛おし゛て゛え゛え゛ぇ゛ぇぇっ!」 「うし゛ろのまりさ゛はは゛らは゛らににけ゛て゛ねええぇっ!」 再び水上を飛んでくる氷塊にゆっくりは悲鳴を上げる。 「まりさはこっちにいくよ!」 「こっちがねらわれてないんだぜ!」 「おいて゛か゛ないて゛え゛え゛ぇぇ!!」 後ろで箱を押していたゆっくりまりさ達は、もう箱は十分早くなったという事で散開。 バラバラに分かれて対岸を目指し逃走を開始する。 その瞬間、不運なまりさが氷塊の餌食になった。 「け゛ひ゛ゅっ゛!?」 氷塊はまりさの体組織を粉砕するほどの威力は無かったが、表皮に穴を開ける程度の運動エネルギーは持っていた。 氷塊がまりさの後頭部に命中した瞬間、まりさの表皮が弾ける様に破れ、そこから餡子が撒き散らされる。 体中の餡子を氷の命中により凄まじくシェイクされたまりさは一瞬で意識を失った。 運動エネルギーを受けてまりさの体は勢いよく前方へ傾斜し、顔面が水面に叩きつけられた。 まりさに当たったことにより運動方向を変えられ、放物線を描いた氷塊が水面に落ちると同時に、ゆっくりまりさだった物体から茶色の液体が滲み出してきた。 岸のほうが騒がしくなる。 命中を確認した妖精達が歓声をあげているのだ。 さらに3個の氷塊が等間隔で投げられ、2個はむなしく水柱を立てるもののさらに1匹のゆっくりまりさを沈めた。 もっとも酷かったのは距離的に最後となるチルノが投げた氷塊がもたらした惨劇だった。 リヴェンジを誓う彼女が投げた剛速球は、箱の後部に命中。 発泡スチロールの脆い背面を粉砕して大穴を作った後、その背面のすぐ前方に居たゆっくりれいむの体を貫いた後に、箱の底面を叩き割って湖底へと消えていった。 雪のように小さくなった発泡スチロール片がれいむの餡子と共に他のゆっくりに降り注ぐ。 「て゛、て゛いふ゛う゛う゛ぅぅぅ!」 「みす゛か゛は゛いって゛く゛るよお゛おぉ゛ぉぉ!?」 「と゛け゛ち゛ゃう、と゛け゛ち゛ゃうよ!」 「い゛やた゛あああぁ!ゆっく゛りし゛た゛いいいぃ!!」 発泡スチロール製の箱は例え浸水しても、8匹のゆっくりを支える程度の浮力は持っていたが、浸水によりゆっくりが解けてしまっては浮いていても意味が無かった。 少しでも水の無い場所に行こうとゆっくりが醜いもみ合いを始める。 「ゆっ!そこはれいむのばしょだよ!ゆっくりどいてね!」 「れいむがどくんだみょん!」 底面のど真ん中に開いた穴からなるべく離れようとゆっくり達が動いた結果、箱の外周部分にのみ体重が掛かることになった。 穴が開いているために力を分散できず、箱のあちこちに無理な力が掛かってゆっくりとたわんでいく。 ミシミシと音がしたと思った次の瞬間に箱は真っ二つに折れた。 「ゆ゛ふ゛っ゛!!」 「み゛ょん!」 「け゛は゛っ!?」 そんな状態の箱にゆっくりが乗っていられるはずも無く、全て着水した。 「こ゛ほ゛ほ゛ほ゛ほ゛ほ゛ほ゛ほ゛っほ゛!!!!??」 「ひ゛やた゛ぁ゛ぁ!!と゛け゛た゛く゛な゛いぃ!」 「は゛か゛らは゛い゛よ゛ほ゛ほ゛ほ゛ほ゛!!」 水面に落ちたゆっくり達は暫くの間もがいていたが、すぐに1匹ずつ力尽きては周囲に中身を出しつつ沈んでいった。 ゆっくり達が妖精の射程から逃れるまでに箱3つのうち1つと12匹のゆっくりが犠牲になった。 出発した岸から目的の対岸までちょうど半分の行程に差し掛かろうというゆっくりは27匹に減っていた。 行程はまだ半分も残っていた。つまり、苦難も妖精によるものと同程度のがあと一回ある訳で… ゆっくりが仲間を失った悲しみから立ち直り、目的地をまっしぐらに目指すようになったとき、最後の苦難が始まった。 引いていた箱がバラバラになった為、手持ち無沙汰だったゆっくりまりさが急に悲鳴を上げ、「と゛け゛る゛う゛う゛ぅぅぅ…」、と言いながら沈んでいったのだ。 「は゛りさ゛っ!と゛ほ゛ち゛て゛え゛ぇ゛ぇっ゛!?」 「なに!?なんなの!?」 「わからないよー!」 「ゆっく゛りし゛た゛いよぉぉぉ!」 今までこの苦難を突破したゆっくりはいない為、何が起こったか誰も分からない。 「ゆ゛ひ゛ゅっ!いた゛いよ゛お゛ぉっ!」 箱の周囲から1匹だけ離れて進んでいたまりさが痛みを訴える。 次の瞬間、まりさの体が急速に下がっていき、帽子に水が流れ込む。 「た゛す゛け゛へ゛!ほ゛へ゛ち゛ゃうよお゛おぉぉっ゛!!」 先ほどのまりさと同じようにこのまりさも進路を湖底へと変更し、沈んでいった。 水中に意識が向いていないゆっくりには、何故まりさが沈んだか分からない。 「い゛やあ゛あ゛ぁぁぁぁ!」 「お゛う゛ち゛か゛え゛る゛うぅぅぅ!」 「れ゛い゛む゛う゛ううっ゛!」 箱を牽引していたまりさはとうとう職務を放り出し、他のまりさと一緒になって四方八方へと逃げ出し始めた。 オール代わりの枝を、漕ぐというよりメチャメチャに振り回すと言った方が妥当な動きで、操作しながら進んでいく。。 しかしその努力は実らず、まりさは1匹また1匹と悲鳴を上げながら沈んでいく。 「なんて゛まりさ゛か゛いな゛いのおお゛ぉ!」 「これし゛ゃうこ゛け゛ないよ゛おお゛ぉぉぉ!」 「た゛れか゛た゛す゛け゛て゛ね゛え゛えぇぇっ゛!」 放り出された箱はしばらくは慣性により前進していたが、水の抵抗によりすぐに速度が失われる。 あっという間に湖面を漂うだけの物体に成り下がった。 それに乗るゆっくりは流石にまりさがいなければ脱出不可能ということは分かっており、悲鳴を上げ助けを求めた。 全く無駄な行為だったが。 ゆっくり達の目的地の岸には先ほどの妖精と同じような体格の生き物が集まっていた。 先ほどと違う点を上げるとすれば、その生き物は人間の子供──少年であるという点だろうか。 少年たちの視線の先では、最後のゆっくりまりさの帽子が今まさに水面に隠れようとしていた。 帽子の先端はあっという間に水面下へ消え、僅かに出るアブクが生き物が沈んだことを示していた。 細長い銀の棒が生えた直方体を握る少年が歓声を上げる。 「やった!最後のヤツが沈んだ!」 「お、凄いな。ヨシちゃん、箱のほうも狙える?」 ヨシと呼ばれた少年に工具箱を持った少年が問いかける。 ヨシは直方体を握ったままブツブツと暗算をする。 「うーん、ちょっと分かんないなぁ。ノリ、何匹沈めたか覚えてる?」 「7匹だよ、全部ゆっくりまりさ。」 双眼鏡で湖面に浮かぶ箱のほうを見ていたノリは、ヨシが突然聞いてきた事にも慌てず答える。 それを聞いたヨシは再び暗算。 たしか10本積めて、1匹に1本使ったから…10ひく7で… 「ってことはあと三本か。正吉、かたっぽだけならやれるよ。」 「じゃー沈めちゃおうよ。」 「りょーかい。」 ヨシは直方体──何かを電波で操縦する機械のようだ──を再び操りだす。 双眼鏡を構えたノリは、その視界の中央にぼんやりとうつる水滴のような形をした物体をみては、ヨシちゃん右だ!、だとか、もうちょい左!、などと声を上げる。 草の上に座り込んだ正吉はいつの間にか取り出した単眼鏡を調節。 正吉は工具に用が無い今の状況では酷く暇だからだ。 「ヨシちゃん!真正面!今だ!」 「りょーかい!一番から三番、一斉発射!」 ノリが出した合図にあわせ、ヨシは操縦機械のボタンのうち1から3の数字が書かれたものを勢い良く押した。 湖面の上で騒ぐゆっくり達の手前で僅かに気泡が発生した。 ゆっくりれいむが“それ”に気が付いたのは全くの偶然だった。 さんざん声を上げて助けを求め、流石に疲れてきた為にうなだれるように下を向いたのが原因だ。 “それ”は水面の下を滑るように向かってきた。 「ゆっ!みんな!なにかくるよ!」 「なんなの?!たすけてくれるの?」 「ゆっくりしたいよ!」 れいむの方を向ける体勢のゆっくりが一斉にれいむの視線の先を注視する。 そこには細長い筒のような物体が3つ、横に並んでいる。 れいむ達に分かるはずも無かったが、“それ”はラジコン潜水艦から発射された魚雷だった。 “それ”はまっしぐらにれいむたちの乗る箱へと突き進んでいた。 れいむは、なんなんだろうね?、と疑問を発しようとした瞬間、轟音と共に自分の体が浮き上がった感覚をおぼえた。 ──わぁい、おそらをとん────。 水面が針山のようにささくれ立つ。 爆発により吹き飛ばされた水が無数の水滴となって落ちてきたからだ。 その針山の中に時々茶色の柱が現れる。 爆発により吹き飛ばされたゆっくりが水面と激突した衝撃で粉々になり、水と混ざりながらそれでも周りの水を押しのけ、逃げ場の無い餡子水が上空へと飛び出したからだ。 あっというまに針山は消え去り、元の静寂な水面が戻る。 最後の箱に乗っているゆっくりたちは騒ぐことすらしない。 木っ端微塵になった箱があった場所に浮いているのは、粉々の発泡スチロール片と、バラバラになったゆっくりの装飾だった。 ゆっくりが満載の箱が木っ端微塵になるのは少年の方でも確認できていた。 「うおお!バラバラになった!」 「三本も使うとすっげえな。」 あまりに派手な爆発だった為に歓声は意外にも小さな物だった。 ヨシが何かを思い出したようにノリへ聞く。 「あれって何匹乗ってた?」 「うーん、確か10匹。」 あっというまにスコアが二倍になった事を聞いたヨシは、今日は向こうの妖精に勝ったな!早く自慢してやろうぜ!、と言い操縦機械のレバーを操作する。 17匹のゆっくりを湖の藻屑と変えた物体──ラジコン潜水艦を回収するために岸へと変針させたのだ。 やがて岸にたどり着いた涙滴型潜水艦を模したそれを回収した少年達は、どこか壊れていないか工具で点検した後に岸を去っていった。 湖面には騒ぎ疲れたゆっくり10匹の乗る箱が未だに残っていた。 湖面に放置された箱が対岸に到着したのは次の日の朝だった。 朝一番に水上輸送を行う為、昨日少年達がいた岸にやってきたゆっくりまりさが漂流している箱を発見したときには、乗っているゆっくりの半数が餓死していた。 少年達が妖精にスコアを散々自慢して里に帰った。 そこまでは良かったが、火薬入りの魚雷で遊んだ事が親に発覚して大目玉を喰らった挙句、子供だけでラジコン遊びをするのは禁止された。 もっとも、暇な虐待お兄さんが休みの時には相変わらずゆっくりを沈めることができたのだが。 ゆっくりまりさの水上輸送は全盛期を迎えてから半月足らずで窮地に追い込まれた。 その後、うーぱっくの空中輸送も猟銃等であっさり撃墜されるようになってからは、里の周囲では見られなくなった。 ゆっくりが何かを思いついてもロクな事にならないのは世の摂理なのだろうか。 人様のSSの設定パクりすぎ\(^o^)/ by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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出勤前にモーニングコーヒーと洒落込むべく、今日は早めに家を出た。 会社最寄り駅近くの喫茶店は出勤者向けに早くからやっている。 そこでトーストにスクランブルエッグで軽く朝食を取って、それからブラックをゆっくり味わおう。 しょせんは大したものではないが、こういうのは気分が大事なのだ。その程度の事で優雅さを味わえるのだから、素直に味わった方が利口だ。 時間は十分にある。 今日は随分と暖かく晴れていて良い気分である。俺と同じように駅に向かう出勤者も何となしに起源良さそうに見える。 橋に差し掛かると対岸の道路に何やら人だかりが出来ているが見えた。 あれは何だろうか。電柱の周りで、十四五人ばかり各々その先の方を見上げている。 よく見ると電柱のてっぺんには一匹のゆっくりがおり、「わからないよー!わからないよー!」と泣き叫んでいた。 本当に分からない。 猫が登って降りられなくなるというのは良く聞く話だが、何で饅頭生命体があんな所に登る事が出来るのだ? しかし……俺は考え直した。そもそもゆっくりなのだ。饅頭が動き、言語を解するのだ。 それを思えば電柱に登るなど大した事でないのかもしれない。 マンションだろうと這い上がってくる奴らだ。 それにしても、馬鹿は高い所が好きと言うが、わざわざ表現してみせる事もないだろう。 橋を渡り、人だかりに近付くと、その輪の中、電柱の根本にはもう一匹のゆっくりが泣き叫んでいた。 「ちぇえええん!ちぇえええええんッ!」 何やら尻尾のようなものを沢山生やらかしたゆっくりが、電柱を見上げてひたすら叫んでいる。 その顔は傷だらけで、帽子は薄汚れ所々すり切れた後が見える。そして近くにこいつのものと思しき尻尾が二本ほど転がっていた。 俺は不思議に思い足を止めた。そうして人だかりに加わってしまった。 なぜこのゆっくりは傷だらけなのだろう。二匹はどういう間柄なのだろう。 一方の疑問は直ぐに解消された。 真下で泣いていたゆっくりは突然泣き止むと、その場を後ろに下がり、勢いを付けて電柱に突進したのだ。 助走を付けてジャンプし、ゆっくりらしからぬ見事な跳躍を見せ、そのまま電柱に激突した。 傷だらけになるわけだ。 「らんしゃまあああ!」 電柱の上から「ちぇえん」と呼ばれたゆっくりの泣き声が聞こえる。 「らんしゃま」と呼ばれたゆっくりは痛みにぐるぐる回っていたが、そのうち止まってまた泣き出した。 俺は素早く見物人の顔を見回した。 饅頭とはいえ、他者の不幸を見て機嫌良くなる奴というのは気持ちの良いものではない。 まあ俺もよくゆっくりを不幸にしているのだが、それとて仕方なしに投げ込んでいるのだ。 だが皆の顔は真剣そのものだった。老若男女、一様に真面目な顔をしている。 沿線の私立の制服を着た小学生達など、「頑張れ!」と声を掛けている。 世の中捨てたものではないらしい。 まあここの住民はよくゆっくりを不幸にしているのだが。 「らんしゃま」は再び電柱に距離を取った。 小学生のうち一人が電柱に向かって飛び、一歩二歩駆け上がる動作をしてみせる。登り方を教えているらしい。 ゆっくりは再度助走を付けた。 「ちぇええええん!」 今度は角度も良く飛び付く事が出来た。その勢いで電柱を駆け上がる。 そして二メートル程登ったところで勢いが尽きてそのままずり落ちてきた。 頭を地面に打ってひたすら回り続けるゆっくり。今度はさっきより回る時間が長い。 その傍らには新たにもげた尻尾が落ちている。 上の方からは相変わらず「わからないよー!」と泣き声が聞こえてきた。 三回目。 今度は電柱との距離を倍にとって勢いを稼ぐつもりのようだ。 相当早いスピードで電柱に飛び付く。角度も上々。 「らんしゃま」は、これならてっぺんまで上れるだろうという勢いで、電柱に刺さっている足場の鉄棒に激突した。 尻尾が何本かバラバラ降ってくる。 そのうちの一本が、登り方を教えていたのとは別の小学生の頭に落ちてきた。 その子供は帽子の上にのっかった尻尾を手に取りまじまじと見つめ、「おいなりさんだ。」と言って食ってしまった。 「おいしい。」 そんなもの食って大丈夫なのか。 それはともかくとして、苦痛から立ち直った「らんしゃま」はまじまじと電柱を見やっている。 障害物の位置を確認しているらしい。 段々上達しているし、こいつはそれなりに学習能力があるようだ。 見物人は一人として立ち去る者もなく成り行きを見守っている。 会社とか学校とか大丈夫なのか。 四回目。 既に満身創痍な「らんしゃま」だったが、尻尾が減ったせいか俊敏になった気がする。 今度は更に早いスピードで飛び上がって、螺旋を描くようにして電柱を駆け上がっていった。 鉄棒も見事にかわしてゆく。 三メートル、四メートル、どんどん登ってゆく。 そして電線や変圧器などの構造物も難なくかわした。 見事としか言い様がない。 だが回避行動よって勢いが無くなってきた。 九割がた登ったところでほとんど止まってしまった。 「らんしゃまあああッ!」 見物人は、俺も含め固唾をのんで見守っている。ここから落ちたら助からないのではないか? 「もう一息だ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇええええんッ!」 「らんしゃま」は叫ぶと最後の力を振り絞って蹴り出した。 そうして残りの一割を一気に飛び越え、とうとう頂上に辿り着いた。 「らんしゃまあ!」 「ちぇえん!」 周りからは拍手喝采が沸き起こっている。 増えて二十人になった見物人達は、良くやった、頑張った、と皆満足そうだ。 だが全員すぐに不安顔になった。見るとゆっくりは不安定にゆらゆらゆれている。 「わからないよ!わからないよー!」 「わからないよー!」 あー。 あいつも降りるときの事考えてなかったんだな。 電柱の頂点に二匹は狭すぎたようだ。 ゆっくりはしばらくゆれていたが、そのうち耐えきれなくなって、ふっ、と落下してきた。 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛!」 「ヴュッ」という生々しい断末魔と共にゆっくりは揃って地上に還ってきた。 「あーあ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇえん」は「らんしゃま」の下敷きになってしまった。 「らんしゃま」は下敷きからころんと転がって、仰向けで「ゆっ……!ゆっ……!」と呻いている。 「ちぇえん」は俯せになって身じろぎもしない。 しばらくすると「らんしゃま」は横目で「ちぇえん」を見つめ、何か語りかけだした。 しかし素人目に分かるが即死である。どうも惨い結果になってしまったようだ。 「行こっか。」 ばつの悪い顔で即死と瀕死の二匹を眺めていた見物人は、小学生を先頭に早々と立ち去っていった。 ここの住民はドライだなあ。 現場には俺と二匹だけが取り残されてしまった。 歩行者が何人かこちらを見たりもするが、特に関心も示さず通り過ぎてゆく。 「ちぇ……えええん……」 「らんしゃま」はひたすら語りかけているが、当然のように反応は無い。 なんだか見るに忍びない姿だ。仕方ない。 死体をひっくり返せば一目瞭然なのだろうが、さすがにそれは酷な気がする。 俺は傍にしゃがみ込んで、既に分かっている事だが、改めて死体を確認してから瀕死のゆっくりに向かって首を振って見せた。 「ちぇえん……」 どうやら理解出来たらしい。手間が省けて助かる。 こいつも尻尾を全部失った上に、頬や額が裂けていて助かる見込みは無いだろう。 俺は立ち上がって右足を上げた。武士の情けとか仏心とか、そんなところだ。 俺を眺めていた「らんしゃま」は怯える事もなく、むしろ急かすように目を閉じた。 間抜けな割に妙に理解の良い奴だ。 止めを刺した後、あの世で仲良くやってくれと思いつつ二匹を川に投げ込んだ。 潰れた死体はすぐさま水に溶けてゆく。 そして俺は駅とは反対の、家に向かって歩き出した。 革靴が随分と汚れてしまったのだ。 こんな格好では会社に行けない。家に帰って靴を磨き直さなければならない。 モーニングコーヒーなどしている時間はもう無いだろう。 俺は陰鬱な気分で家に向かった。 By GTO